「終盤の表現不足がちょっと残念」インビクタス 負けざる者たち つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
終盤の表現不足がちょっと残念
人種差別関係の映画はたくさんあるが、その多くは差別を受ける人々の苦しい状況とちょっと理解を示す白人が登場して、これから変わっていこうよ、みたいな内容だよね。
だけど「インビクタス/負けざる者たち」は、もっと先の、白人と黒人が一つになって、一つの国になろうという融和の物語であるのが珍しいし興味深いよね。
その融和の過程は、大統領の身辺警護をする人たちを通して本筋のストーリーを邪魔しない程度にさりげなく表現されているのが上手かったよね。
中盤くらい、具体的には大統領とキャプテンが会うくらいまでは、人種差別を扱った作品の最高傑作なのではないかと思っていたよ。
それが、ワールドカップが始まる頃には熱さのない乾いた感じになっていき、ラグビーの試合は、まあ良かったけれど、肝心の一つの国のほうはイマイチ盛り上がらなかった。
序盤の控えめな表現をそのまま後半も持続させてしまったのがよくなかったと思うね。簡単にいうなら説明不足。
ラグビーチームが団結していく過程も、キャプテンの父親の心変わりも、黒人たちがチームを応援するようになる過程も、何もなかったよね。
映画の終盤に向けてもっとガツンとくるダイレクトな表現や、少々大袈裟でも盛り上げるための表現は必要だったと思うな。
試合結果を知っていて、気持ちが高揚しなかった自分が悪い可能性もあるけどさ。
それと、映画の中のことがどれだけ本当かわからないけど、マンデラさんという人はなかなかの策士だよね。
理想を掲げるだけなら多くの人が出来るけど、それを実現するための具体的な案と実行力は凄いと思ったね。
最後に、本物のマンデラさんの写真は凄くイイ笑顔が多いけど、30年投獄されていた人があんな笑顔になるなんてどうゆうことなのだろうと、マット・デイモン演じるキャプテンのように考えてしまったのが一番の収穫だったと思う。