「緻密にディテールを紡ぎ上げ、母の心のうねりを描き出す傑作」母なる証明 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
緻密にディテールを紡ぎ上げ、母の心のうねりを描き出す傑作
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ポン・ジュノの映画では決して絵に描いたような「善」がまかり通る訳ではない。むしろ、社会通念や法では許されない行為に至る過程や登場人物の心のうねりをダイナミックに描き出すところに彼の手腕は光り、その筆致の深さが映画の陰影を際立たせ、社会の暗闇をじっと見据える視座を我々にもたらしてくれる。
「母なる証明」は笑える箇所もたくさんある。そしてその分だけ闇も深く、非常に風変わりな物語構造の中で「母親」の心情がえぐられていく。見た目は地味な物語なのに、「自宅の奥から表の様子を伺う」「水たまり」「針のケース」などの要素が幾度か繰り返される中でそれぞれの意味を持ち、土砂降りの雨の中で傘がパッと咲く場面が「目配せ」のように機能する様など、ポン・ジュノが我々に向かって発信しているメッセージも多い。濃密なミステリーであると同時にどこか観客までも引きずり込み共犯関係に仕立て上げる構造に凄みすら覚える怪作である。
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