「ディア・姉ちゃん。」おとうと ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ディア・姉ちゃん。
いかにも山田洋次らしい、心温まる作品だった。
市川崑の『おとうと』にオマージュを捧げつつ、
内容はすっかり寅さんワールド^^;に仕上げた監督。
鍋焼きうどん、手を紐で結ぶ、という名シーンを
さりげなく表現したところも巧い。幸田文の原作は
かなり時代背景が違うこともあり難しかったと思う。
さて、吉永小百合ファンには申し訳ないが^^;
本当にこの人はなにを演っても吉永小百合である。
美しい、凛としている、どこをとっても小百合様然と
した感じが抜けないのは今回も同じ。ただお相手が
鶴瓶なもんだから、今回かなり軽妙に演じている。
監督特有のホームドラマ形式、笑って泣いて怒って
泣いての繰り返し、娘の結婚・離婚に至っては現代
のすれ違い生活を反映し、みどりのいえに至っては
介護や奉仕の真実を描く。今時こんな…?という
はてなマークが、若い世代には大いに浮かぶだろう
演出にやや苦笑いしつつ、でも今の時代に足りない
のってこういう繋がりなんだよね。と心で強く感じた。
そして、どこの家にもこんな厄介者がいたな、と。
近親者というわけではなかったが、亡くなる最期の
最期まで周囲に迷惑をかけ続けた伯母さんがいた。
子供がおらず、夫は先に他界、多額の資産があった
にも拘らず、すべてを酒とギャンブル等で使い果たし、
病に倒れてからは誰も見舞いにすら来なくなった。
そんな伯母に、私の母はせっせと食べ物を運んでは
世話をしていた。文句も多かったが^^;なんでまた?
とその頃の私は思っていた。理由を聞いても「あんな
風に自分がなりたくないから」とか「かわいそう」とか
そのくらいの返事しかなかったが、誰もしないことを
せっせと繰り返す母には計り知れないものを感じた。
今でもその伯母の墓には墓参りを欠かさない。
今作で描かれる姉弟の造詣に涙が出たのは、
弟が小さな頃から抱き続けた姉や周囲への劣等感を
なんとか拭い去ってやりたいと奮闘する姉の頑張りと、
そんな姉の気持ちを見抜いて弟に子供の命名をさせた
亡き夫の器の大きさである。何の取り柄もないとまで
言われた弟が、死に際にどれだけの言葉を貰えたか。
どうしようもないアホにはどうしようもない魅力があり
どうしようもなく人を惹き付けるのは、強ち嘘ではない。
やりすぎ?鶴瓶は飄々と弟を演じ、最後まで崩れない。
どう見ても姉弟に見えない二人に絆を感じてしまうのは
他ならぬ山田洋次監督の技量によるものだと思える^^;
こういう日本映画は、これからもっと必要になると思うし、
ずっと作り続けて欲しいなぁ。
(加藤治子が素晴らしい演技^^;近藤公園もいい役だったv)