「後半はタイムリーな内容だが・・・」おとうと マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
後半はタイムリーな内容だが・・・
鉄郎の身勝手とも思える大立ち回りは鶴瓶の真骨頂。鉄郎を嫌悪する小春と、ボケてるのかボケてないのか分からない絹代を、蒼井優と加藤治子が好演。日本の映画界にはこの人しかいないのかと思えるぐらい、あちこちに顔を出す名脇役・笹野高史ががっちりフォロー。そして、吉永小百合ただひとりが、表情といい身のこなしといい、台詞回しも浮いているのだった。単に演技が古くさいというより、その場にそぐわない違和感がある。
違和感といえば、吟子が経営するのが商店街の薬局という割には、立地が隔離されたような坂の上だ。臨場感がまるでないところは「武士の一分」と同じだ。アパートの小鳥は、屋根の上いっぱいの黄色いハンカチを連想させるし、どうもアタマの半分がよそに行ってしまう。
松竹というと、長年、庶民の生活を描いた作品を送り出してきた老舗だ。そこに住む人のさりげない目線の先を追ったカットが、松竹独特の空気を放っていた。ところが本作では、下町情緒を出したかったのだろうけど、無駄なカットが目につく。
末期がんの余生をどう送るべきか、がんと闘うのではなく、がんと共生しようという最近の考え方を反映した後半はタイムリーな内容で、考えさせられる。
ラスト・シーンに小林稔侍を登場させなかったのは正解だった。考えただけでも濃くなる。
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