劇場公開日 2010年1月30日

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おとうと : インタビュー

2010年1月23日更新

笑福亭鶴瓶が、俳優としての地盤を強固なものにしつつある。山田洋次監督の最新作となる「おとうと」が自身26作目の出演になるが、2000年代に入ってペースが加速。08年には山田監督作「母べえ」を皮切りに「映画 クロサギ」「同窓会」「奈緒子」「私は貝になりたい」で重要な役どころを演じ、昨年は主演を務めた「ディア・ドクター」で日刊スポーツ映画大賞主演男優賞を受賞している。今回は、山田監督が「丹野鉄郎を演じるのは鶴瓶さん以外考えられない」と直々に指名。鶴瓶のどこに多くの映画監督がひかれるのかに迫った。(取材・文:編集部)

笑いながら行間を読み解く、笑福亭鶴瓶の底力

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「鉄郎のように」のリクエストに応えて…
「鉄郎のように」のリクエストに応えて…

■中居正広の独断が奏功

「おとうと」についての構想を、鶴瓶は山田監督から「母べえ」の撮影中に聞かされていたという。「市川崑監督の『おとうと』を題材に撮ってみたいと言っていたんですよ。あの作品の弟って高校生ですから、僕はでけへんし無理やろうなと。それが、こういう設定になってほんまに話がくるとは思わなかったです」と振り返った。

そして、姉の吟子役には「母べえ」に続いての共演となる吉永小百合。「僕が高校生の役をやるよりも、吉永さんの弟の方が違和感あるやないですか。タモリさん、ごっつ怒ってますから。でも、兄弟でも全然似ていないのもいますからね」と屈託なく笑う。

鶴瓶が演じる鉄郎は、夫亡き後も誠実に生き、ひとり娘の小春(蒼井優)を育て上げた姉とは似ても似つかない問題多き男だ。吟子の夫の十三回忌の席で泥酔し大暴れして音信不通になった“前科”があるにもかかわらず、小春の結婚式でも大騒ぎして周囲に波紋を呼ぶ。そして、鉄郎が引き起こしたある出来事をきっかけに、固いきずなで結ばれていた姉弟の関係に決定的な亀裂を生じさせてしまう。

この直後から大荒れになる
この直後から大荒れになる

そんな亀裂が生じても、吟子の鉄郎を見つめるまなざしは、どこまでも優しい。余命いくばくもない姿に変わり果てた鉄郎をみとるべく、一路大阪へ。このシーンの撮影に向け、鶴瓶は過酷な減量に挑むことになった。当初は78キロから68キロへの10キロ減で臨むはずが、「中居正広がね、『65キロまで痩せるって言ってましたよ!』と決めてしまいよって。言うてないのに『痩せられなかったら、マカオのビルからバンジージャンプですよ』ってテレビ番組で発表してしまったんや。どっちでもええわと思ったんやけど、“この男、いっぺんギャフンと言わさなあかん”と思ってね。それで痩せられたんだから、中居にも感謝ですよ」と一笑に付した。

インタビュー3 ~笑いながら行間を読み解く、笑福亭鶴瓶の底力(2/2)
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