南極料理人 : インタビュー
堺雅人 インタビュー
――料理人を演じるにあたって調理技術の訓練はしましたか?
「これまでも自炊程度に料理はしていましたが、もちろん練習はやりましたよ。食材を鍋であおる作業が難しくて、家で練習しても中々できるようにならなかったんです。どうしても『このあと床がぐちゃぐちゃに汚れる』とか考えて動作が小ぶりになってしまうんですよね。でも助監督が用意してくれたキッチンでなら、汚しても後で片付けてもらえるので気にせずできました。ということで、料理が上手くなるコツは、汚してもいい環境を整えて大胆にやることです(笑)」
――西村が作るおにぎりがとても美味しそうでしたね。
「おにぎりに関しては自分の隠れた才能を発見しましたね(笑)。手がおにぎり向きなのか、すごく美味しそうに作れるんですよ! 大きさも小腹が空いた肉体労働者がガブつきたくなるようなサイズで、エッジの効いた本当にいいおにぎりなんです。これからも握り続けていきたいと思います(笑)」
――原作者の西村さんと会う機会はありましたか?
「お話しする機会はありましたが、料理のことは全然話しませんでした。ポスターで僕たちが履いている長靴はD靴といって、防寒性には優れているのですが、走るとよく捻挫してしまうんです。そのせいか『捻挫には気をつけて!』と何度も言われました。劇中でも何人も転んでましたけど、あれは別にウケを狙っているわけではなく、本当によく転ぶんです。
西村さんは人をもてなすことに喜びを感じている方という印象です。たとえるなら、創作メニューが多い居酒屋のマスターという感じかな。そういう人、いますよね? でも今回の映画で彼の人柄を役に反映させたということはなく、ご本人とはまったくの別人と考えていました。彼が居酒屋のマスターだとすると、僕はどちらかというと雇われコックというか、それまで黙々と自分の仕事をこなしていた人間が、料理をすることで少しずつ周囲の人々と絆が生まれていくことに気づく役だと感じたので」
――人をもてなす立場の人間を演じて気づいたことはありますか?
「僕には人をもてなすのは無理だと思いました(笑)。誰にも『ありがとう』と言ってもらえないのに、人の喜ぶ顔を楽しみにしてやり続ける仕事なんて、本当にすごいことだと思います。とても自分にはできないです。僕が思うに、役者は周りに踊らされる方なんです。つまり、ご飯を食べろと言われて美味しそうに食べるのが役目。だから料理人のメンタリティは理解できるし憧れるけど、自分の役目ではないんだろうと感じました」
――最後にメッセージをお願いします。
「お腹を空かせた状態では見ない方がよさそうですね(笑)。シンプルなことをシンプルに伝えている映画なので、大切な人と見に行くのがいいと思います」