「ハチの恩返し。」HACHI 約束の犬 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ハチの恩返し。
渋谷のハチ公像は待ち合わせの目印として有名だし、
先だってTV放映された「ハチ公物語」はほぼ実話である。
それに続いて、このハリウッド版「HACHI」の登場。
犬好きはもちろん、この物語を観て何も感じない人の方が
おそらく少ないのではないだろうか。
ただ「待つ」ことのできる動物が、一体どのくらいいるのか。
私はこの「待つ」という行為にものすごく興味があったのだ。
不信感を募らせる犬(人間)ならば、大人しく待ったりしない。
どんなに嫌われようと最愛の人を追い回してくっ付くはずだ。
じっと待てるほど心に平安を与えるのは、紛れもなくその親。
つまり飼い主なのである。絶対に帰ってくるという安心感。
その昔、やんちゃで我儘でどうしようもなかった私の息子が、
(もちろん親を待つなんてことはできないので、常に大騒ぎ)
テーマパークのベンチでじっと私を待ってくれたことがあった。
お土産を買ってくるからね。絶対ここにいるのよ。という
私の言いつけを守って(実はかなり時間がかかってしまったが)
ジーっとそこで待っていた。「ごめんね~遅くなっちゃった」と
駆け寄ったとき、安心したのか「良かった~。僕ね、お母さんが
なにか事故に遭ったんじゃないかと心配したんだよ」と言った^^;
…それはまったく逆である(爆)
だいたい子供を置き去りにして買い物に行く私がどうかしてる。
それなのに…。この時ばかりは思いきり抱き締めてしまった。
HACHIを観ていたら、その時のことを思い出してしまった…。
HACHI。文句なく可愛い。可愛くてどうしようもないのが正解(爆)
(子供は柴犬を使っている。顔が秋田犬とは違うので分かると思う)
パーカーに運良く拾われたHACHIは、彼の愛情ですくすくと育つ。
そして、すこしでも彼と長くいたいHACHIは、駅までの送り迎えを
するようになる。その光景は駅で話題となり、皆がHACHIを知る
ところとなった。そんな幸せな日々から、ほどなくして…。
日本人なら大方は知っている話を、L・ハルストレムは上手に
脚色して見せてくれる。もちろん「ハチ公物語」のベースは崩さず
(というかムリムリ合わせている箇所も多いが^^;)
人間と犬がより近い関係に。信頼関係の描き方が実に優しい。。
HACHIは本当に、パーカーのことが大好きだったのだと伝わる。
後半で黄色いボールをくわえたあたりから、涙腺がゆるみ、
その後の展開を思うだけで涙が溢れ出た。どんなに好きでも、
どんなに離れたくなくても、いつか別れがくる。永遠の別れが。
ここでまた、先日亡くなった「金魚」のことを思い出してしまった。
(あぁ~もう、ナンなんだ私は。自分のことばかり思い出して…)
大好きな相手との別れは死ぬほど辛い。人間ばかりでなく。。
パーカーが亡くなった後も、HACHIは駅に通い続けるが、
実はそこからの方がずっと長い。よそへ行っても、預けられても、
ハチ公同様、HACHIもそこへ通い続けた。それが習慣だった?
とはいえ、果たして独りでそれを続けられる人間がいるだろうか。
幾年もそれをくり返しただけでも、この子は本当に偉いと思う。
ハチ公もHACHIも、飼い主からたくさんの安心を貰っていたのだ。
だから彼らの顔に不安はない。逢えない不満はあってもね…x
「来ない人を待ち続ける。」とハチ公を美談化したのは人間、
「いや、実は餌目当てだったんじゃない。」となじるのも人間。
人間てやつは本当に浅ましい…。
映画でのHACHIは、やがて野良犬となるが、あれも無責任だ。
HACHIがそんなに行きたがるなら、行かせてやればいいのだが、
逢えないのが分からないなら、毎日迎えに行ってやるくらいの
そんな労を抱える飼い主にはなれないもんだろうか。と思った。
責任がとれないなら、絶対に動物を飼っちゃいけない。
HACHIの気持ちを代弁したような台詞は、人間側の解釈である。
ただ救いなのは、
実際のハチ公は野良犬ではなかった。方々を転々とはしたが、
最後は引き取られた家から駅までを通っていたんだそうだ。
駅前の焼鳥屋のやきとりが大好物で、それを貰うのも楽しみ。
そのうち病気になり片耳が垂れたが、晩年までハチ公として
人間たちを喜ばせ、最期は駅の反対側にある橋傍で亡くなった。
享年11才。
盛大な葬式のあと、大好きな先生のお隣に分骨され眠っている。
ハチと先生が暮らした日々は、僅か2年にも満たなかったそうだ。
(ボロ泣きは必至だけど、観るなら必ず字幕版をお薦めします)