「高潔な物語」HACHI 約束の犬 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
高潔な物語
縄文柴犬を飼っていたので、日本犬特有の賢く意志が強くて、高潔で忠実で、愛玩ではなく相棒になれるところがしっかり描かれていて、飼っていた犬とも重なった。日本犬でなければ、ハチは信念よりも生きやすい道を選び、愛想を振りまいて苦労しなかったと思う。製作陣がハチの性格まで理解して、原作に愛情を持って作っているのが伝わってきて、嬉しかった。リチャードギアも、犬が大好きなんだなぁ。何度も読んだ原作の映画化に不安があったが、舞台は渋谷でないけれど、原作、映画館で見た時、今もう一度見た時、伝わってくるものは同じだった。
教授と一緒に過ごしたのは2年間、その後待ち続けたのは5倍近い9年間。教授が帰ってこない事を理解できないからではなく、また会える可能性を逃したくないから、万が一帰るなら真っ先に会いたいから、約束したから、主人がまた現れるとしたら駅、ということで待っている。大好きな大好きな主人を待つ9年もの長い間、幸せな思い出を擦り切れるほど何度も反芻しながら、再会を願い待ち続けたのだと思うと、愛犬に限らず大切な存在に伝える愛情を惜しんだり、裏切ったり絶対にしてはいけないと自分を戒める気持ちが強くなる。「ずっとずっと大好きだよ」を小学生で読んでからずっと、惜しみなく愛する事を日々心がけてきたのに、いざ愛犬を失うと、果たしてひとつの命の人生を幸せにできていたのか、疑問と後悔と失った哀しみが何年経っても付きまとう。教授も愛情全開でハチに接していても、死の淵で断腸の思いだっただろう。ハチがまどろみの中でやっと再会できて、幸せそうな顔で永眠する場面に少し安堵した。今の渋谷駅の発展をどう思うかな?
ただ、もっと妻や家族がハチをもっと大切にして欲しかった。簡単に手放しすぎでは?妻もハチに理解は示してなんだかんだで可愛がっていたし、夫を突然亡くし、夫が愛したハチを見るのも辛い気持ちもわかるけれど、保護できない事に心配はないのだろうか。過去に犬を飼っていたとは信じられない。犬は家族なのに。ハチ自身が教授だけに忠誠心を持っていたにしても、教授の死後は、どこにも居場所がないのを悟って、17時だけではなく、常に野良犬になる選択しかなかった気がして、不憫でならなかった。