劇場公開日 2009年6月13日

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レスラー : インタビュー

2009年6月10日更新

ミッキー・ローク インタビュー

娘ステファニー(エバン・レイチェル・ウッド)と久々に語らいのときを持つランディだが……
娘ステファニー(エバン・レイチェル・ウッド)と久々に語らいのときを持つランディだが……

──出演料はゼロというのは本当ですか?

「最低限のギャラはもらった。映画の出演料としては十分とはいえない少額をね。ギャラが目的ではないし、ダーレン・アロノフスキーの映画でなければ出演はしなかった。いいかい、彼はここにいる誰よりもアタマがいいんだよ」

──ランディを演じるにあたってあなたから監督に出したアイデアなどはありましたか。

「会う前に、ダーレンのことをちょっと調べてみた。過去の作品を観た限りでは、執拗なくらい、革新性を追及する監督だと感じた。思いもよらない方向から見る者に飛びかかってくる。テーマとして取り上げる素材に大博打をうつ。彼に初めて会う前にオレが得たこういう情報は、昔、フランシス・コッポラについてオレが集めた情報を彷彿とさせた。コッポラは『ワン・フロム・ザ・ハート』なんていうミュージカルも作れば『地獄の黙示録』も作るし、他にもずいぶんメチャクチャなスゴイやつを撮ったかと思えば、『ランブル・フィッシュ』で違う方向に飛んでいって、今度は全然別の方角から跳ね返ってくる。そんな感じ。ダーレンも、オレは本気で金を賭けたっていいけど、ある種のスポーツ界でよく言う、“30年に1人の逸材”ってやつだと思うんだ。ものすごく長い、輝かしいキャリアを享受するやつらの1人なんじゃないだろうか。

撮影中のダーレン・アロノフスキー監督 ハーバード大学出身の秀才
撮影中のダーレン・アロノフスキー監督 ハーバード大学出身の秀才

彼に会ったとき、まず“いいかい、これから言うことをちゃんと聞いてくれ。何もかも、僕が言うとおりにやってもらうからね。時間厳守。クラブなどでの夜遊び禁止。スタッフの前で絶対僕に対して不遜な態度をとらないこと。これが守れたらギャラを払うから”って言ったんだ(笑)。オレは“こいつ、なかなかやるじゃないか”と思ったよ。今までオレに面と向かって、こんなことを言った監督はいなかったね。それをダーレンのやつは、あのかわいいピンクの指をオレに突きつけて言ってのけたんだぜ(笑)」

──プロレス業界がこの映画をどんな風に受け止めているのか、とても興味深いです。

「オレはボクシングをやってたから、プロレスには一切敬意を持ってなかったんだ。台本通り、振り付けどおりにやるなんて、クズだと思ってた。ところがだ。レスリングのトレーニングを始めたら、すぐ病院通いになった。1週、3週、4週、6週とやるうちに脚、膝、首、腰が次々とやられた。自分の2倍はありそうなデカいやつにひょいと持ち上げられて、ぶん投げられる。ロープを使ってフリップしようとして、失敗してひどい目にあう。レスラーのキャリアが13年だとすると、彼らは最後のほうでは靴紐すら満足に結べなくなってくるんだ。

レスラーたちには強い仲間意識があってね。一緒にドサ回りしたり、ガソリン代や食い物を分け合ったり、テクニックを教えあったりするんだ。試合は多分にチームワークだからね。お互い、相方に頼るところが大きい。そして相方に対する信頼がなければ成り立たないし、その信頼が強ければ強いほど、互いにすごいワザを繰り出せて、客を熱狂させられる。レベルの違う振り付けや高度な運動能力が必要なワザを披露できるからね。オレがその存在すら知らなかったような高度なやつをさ。彼らはライトの下の一瞬、そのためだけに生きる。客のアドレナリンが噴出する。それを浴びて、彼らは自分を極限まで駆り立てるのさ。人体の能力の限界を超えてね。だから鎮痛剤が要る。酒や、ステロイドが要る。止まれない、止まっちゃダメなんだ。

みんな、ダーレンになぜこの映画を作ったのかと訊ねるんだが、それは、ダーレンがでかい脳ミソを持ってるからだと思うよ。ダーレンはオレに“でかいイチモツを持ってるからだ”と言ってもらいたいだろうけど、脳ミソと言っておくよ(笑)。ダーレンは、レスラーたちの心理が読めて、彼らを突き動かしているものが何かわかるからなんだな。彼らは珍種なんだ。彼らは稀な種類の人間達なんだよ。筋トレのシーンを観ればそれがよくわかるはずだ。ステロイドの情報を交換したり、女や酒のことも含めて互いを助けるためならなんでもする。そういう仲間意識は他のスポーツではめったにないだろう。特定の1人や2人となら、もしかしたらあるのかもしれないけど……。ちょっとバイカーズ・クラブに似てるかな」

──本作はベネチア映画祭のほか、多くの賞を受賞しました。

試合中のランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン
試合中のランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン

「いいかい、オレたちはこの映画の配給元を見つけられるかどうかさえ、わからなかったんだぜ。わずかな製作費で映画を作って、ベネチアに持ってった。そこでぶっちぎりの成功を収めて、金獅子賞を獲った。40年の歴史で、アメリカ映画はたったの3本目だっていうから、なかなかの快挙だ。でもその時点ではまだ配給元がない。それから、トロントへ持っていった。そこでフォックス・サーチライト(Fox Searchlight)といういい配給元を見つけた。それでキャンペーンにもっと資金を投入できるようになった。オレたちの成功を信じてくれてるからね。というわけで、オレも以前ならやらなかった仕事をこうしてこなしてる。エンジンがちゃんと回り続けるように気をつけてるってわけだ。

今、このポジションにいるってことを、本当にラッキーだと思うんだ。14年間という余りにも長い期間なんで、よくわからなくなってて、12年とか13年とか言ったりもするんだけど、実際は16年かもしれない(笑)。延々ベンチを暖めた後だしね。あんまり長く座ってたもんで、ケツにこんなにでかいトゲが刺さっちまった(笑)」

──本作には、あのブルース・スプリングスティーンが映画のタイトルと同名の主題歌を提供しています。あなたとブルースとの友情から生まれた曲だと言われていますが、聴いてみた感想は?

「すごくいい曲だよね。ブルースに手紙を書いて直接オレが頼んたんだ。そしたら快く引き受けてくれて、ツアー中にこの曲を書いてくれた。オレへの友情の印として作ってくれたんだよ。本当に気前のいい人間なんだよ。(挿入歌を提供してくれたガンズ・アンド・ローゼズの)アクセル(・ローズ)やスラッシュも本当に心のやさしい人たちなんだ」

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