「映画「ゼロの焦点」おおいに語る」ゼロの焦点 Kadwaky悠さんの映画レビュー(感想・評価)
映画「ゼロの焦点」おおいに語る
ああ、ご紹介が遅れました。
私ナビゲーターの大爆恕シチューです。
怒じゃないんでそこんとこヨロシク!
そして、今回のゲストは映画評論家の聖遼印龍酔さん。
新本格の推理小説家(神)の人とは関係ないし、
大塚英志が流水の名義で作品を作っただけなのに
あえて自分が清涼院流水だ、などとなぜ嘯くのか。
それはここでは論議の対象としませんが、
ぜひどこかで問い詰めていただきたい問題ですね・・・
さあ、龍酔さん、その今回の映画「ゼロの焦点」ですがいかがでしたか?
龍酔「はい、今回兎にも角にも、広末さんにGOODですね」
- つまり広末さんがよかったと、文字通りですが・・・
龍酔「はい、広末さんのあの舌足らずな物言いは、いまでもぼくらのアイドルです」
- 確かに広末さんの存在感は、今回の映画の重要な要素ですね。
室田佐知子役の中谷美紀や田沼久子役の木村多江が汚れ役となり、
彼女らに対峙する形で配役されているわけですが、
少々広末さんには難易度が高いのでは、とも思いましたが…
龍酔「確かにその向きもあります。
どちらかというと、小説の禎子の方が雰囲気が近い気がしますが、
それでも映画の禎子もなかなかですよ。」
- 映画は小説とはキャラクター設定がかなり変わってるようですね。
龍酔「今回のテーマの中に、女性の権利の復興というものがあります。
そのため、女性がとても力強く描かれる必要があったようです。
和服が似合う清楚な室田夫人は、日本初の女性市長誕生を影から支える
女性指導者として、派手目な役作りをしています。
だからなのか、小説では仲睦ましかった室田夫妻が映画ではそうでも
ありません。また、憲一に対する態度も家族ぐるみというような感じで
はなく、陰鬱な影を内包しているように見えます。
さらには、室田婦人である佐知子がパンパンをしなくてはいけなかった
理由づけに、ご丁寧に弟を新キャラとして設定しています。これは余計で
したけどね。
そうやって、ダークな実力者としての女性像がすでに設定されています。
この室田佐知子に対抗するために、やはり昔ながらの高貴な純愛女性で
ある禎子も強くならざるをえません。」
- もともと小説も謎解きミステリーという感じではなかったですが、
映画はさらに別の様相をしているとも言えますか?
龍酔「そうですね。戦後の日本女性、ここではパンパンという売春婦が抱え
ていた傷跡が結果的に殺人にまで発展するわけで、そういう「砂の器」にも
通ずるテーマ性を犬童一心がどこまで描ききれるのか、微妙でしたが…」
- それで?
龍酔「やはり微妙でしょうね。後半はなんだか火曜サスペンス劇場化して
いましたからねえ(笑)。まあもともとこの作品自体がサスペンスの走り
だとすれば、原点回帰なのかもしれませんが…」
- やっちゃった感はありますねえ。
龍酔「そうですね。VFXもがんばって、昔の日本を描いてはいますが、
映画的な迫力には欠ける気がします。」
- ただまったくダメってことはないでしょう?
龍酔「それはその通りです。ひとりで観に来られていた何人かの女性は、
感極まってエンドロールが終わってホールが明るくなっても席を立てないで
いました。まさか寝てたわけではないと思います(笑)
ぼくなんかは、“純愛”というテーマではなかなか見ごたえがあった気が
しています。純愛を貫こうとしたことが結果、事件の全容解明につながって
いくという大筋のストーリーはきちんと描かれています。
ただ、佐知子の描かれ方があまりにもチープになってしまい、そことの
バランスが崩れてしまっています。
さらには、第3のキーマンとなるはずだった田沼久子は、捨て駒にもなって
いないぐらい、かわいそうな扱われ方ですね。
そのバランスの悪さが、2時間ドラマの様を呈していくんですね。」
- 小説と違うところと言えば、室田社長のラストはいかがでしたか?
龍酔「ぼくはあのシーンは比較的評価しています。
先ほども言いましたが、映画では室田夫妻の仲はあまりよくは描かれて
いませんでした。しかし、最後になって室田社長は佐知子に対しての愛を
表現できたのではないでしょうか。」
- 確かにそういう見方もありますね。
それでは最後に龍酔さんの今回の点数をお願いします。
龍酔「はい、☆3つです」
- ありがとうございました。