「about:blank」ゼロの焦点 masakoさんの映画レビュー(感想・評価)
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時代は昭和32年。
戦争が終わり、高度成長期が始まろうとしている時代。
鵜原憲一とお見合いで結婚した禎子。夫は自分のことをあまり話さない人だった。その夫は、前任地・金沢での仕事の引継ぎに行って来ると言ったまま、新婚一週間で失踪。禎子は夫を探しに金沢へと向かい、憲一の後任である本多の協力を得て、憲一の行方を追う。
しかし、憲一が住んでいたはずの住まいは1年半前に引き払っており、彼が金沢でどこに住んでいたのか、本多達も知らなかった。そこで憲一の得意先であった室田耐火煉瓦株式会社を訪れ、そこで社長夫人の佐知子と、受付嬢の田沼久子に出会う。さらに金沢で憲一に関わる人々が次々と殺されていく。
松本清張の原作は読んだことがなく、犯人もわからないまま鑑賞したのですが、観る前にこの人が犯人なんじゃないの?と思っていた人が犯人でした。ただその殺人に至る動機などについては全くわかっていなかったので、普通にサスペンスとして面白く鑑賞しました。まぁ2時間ドラマでも十分だったのでは?という気がしないでもなかったですが。
相手のことをほとんど知らないまま結婚する、というのは今を生きる私たちにとってはちょっと理解しがたいものがありますが、この当時はよくあることだったようで、結婚してから相手のことを知っていく、という感じだったみたいです。
これからこの人と生きていくと決めたのに、その夫が一週間で失踪。そして探しはじめて、初めて夫のことを何も知らなったことに気付く禎子。
夫はなぜ失踪したのか?連続殺人事件の犯人は?
すべては禎子が知らなかった憲一の過去にさかのぼります。戦後、日本が米国の占領下にあった頃の立川。お嬢様育ちで何不自由なく暮らしてきた禎子とは違って、当時生きるために必死だった人たちの姿。その時代に翻弄された人々。そして夫の知られざる金沢での生活。
そして、これから新しい時代が切り開かれようとしている、日本は変わろうとしている。そんな時代の変わり目に、開かれた未来への夢を抱いたことが、悲劇を招いてしまったのかもしれません。
何も殺さなくてもいいのに、と思ってしまいましたが、自分を守ることで必死だったのかもしれません。その犯人の壊れ方がまた見事でした。
全体的にわかりやすい展開で、中谷美紀と木村多江の演技も良かったのですが、面白かったかと聞かれると正直ちょっと微妙。悪くはないけど期待していたほどの面白さはなかったのも事実で、なんとも評価が難しい感じです。