「沈まぬ人生。」沈まぬ太陽 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
沈まぬ人生。
あれほど話題になった原作をよくぞ映像化した。と
評論家筋も評価している作品だが、私もそう思った。
冒頭のジャンボ機墜落事故は、否応なく御巣鷹山の
悲劇を描いており、とても普通の感覚で観られない。。
その背景にあったもの。生命をも疎かにした組織悪の
実態をフィクション(表向きは)の形で、抉り出している。
渡辺謙が演じる恩地元にはモデルが存在している。
(小倉寛太郎氏・元日本航空労働組合委員長)
彼が組合でストを示したことで社から懲罰人事を受け、
(表向き海外派遣)カラチ、テヘラン、ナイロビに10年間。
呼び戻されて組織の立て直しを図るも、またも圧力で
中断を余儀なくされ、再びアフリカへ。
そこで見たのがタイトルの「沈まぬ太陽」なのである。
この、長い長い(原作と比べれば短いが^^;)作品も、
恩地が味わった歳月が集約されるラストシーンでは、
あぁ…という気持ちがこみ上げ、感極まってしまった。
ただしかし、小説なのであくまでフィクションでもある。
彼は墜落事故当時、遺族の世話係にはなっていないし、
その他の人物に於いても、総てが真実ではないらしい。
虚実ない交ぜに描かれている、としてもやはり私達は
あの事故を一生忘れることはできないだろうし、長年の
企業体質や構造が今やっと悪しき問題点を露呈させた
面からも、なんてタイムリーな公開!としか思えない。
でもこの作品が本当に描いているのは、
会社でミツバチのように働く「お父さん」という存在感。
男たるものは家族を守るため、己の自尊心を守るため、
組織や社会に翻弄されながらも毎日それに耐え尽くし、
自己の信念に決して諦めない強さと潔さを持つことを
全面に押し出した内容となっている。熱い生き様!
きっと誰もが恩地のような生き方をしたいと思いつつ、
行天のような生き方をしている気もする。
いちばん心に残るのは、過去の苦労を百万倍しても
墜落事故で家族すべてを失った遺族に叶いはしない。
という台詞だった。角川と対立したという航空会社の
誰ならこの言葉の重みを理解できるんだろうと思った。
(奥さんや子供達も大変だったろうな…女もつらいよ。)