劇場公開日 2009年10月24日

「スクリーンの外のイメージがわかない」沈まぬ太陽 ogさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5スクリーンの外のイメージがわかない

2009年11月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

たとえば小説を読んでいると、活字で書かれた光景やキャラの心情をイメージし、さらに活字の外にイメージを拡げていく。映像でも同じことで、スクリーンに描かれた光景からその外にイメージを拡げていく。絵画や音楽や詩なんかにも同じことが言えるように思う。

 このあたりスピルバーグは抜群のセンスを持っていて、原作からイメージを拡げて映像化するのも、観客にスクリーンからイメージを拡げさせるのもうまい。

 さて、この作品からはどんなイメージが拡がるかといえば、題名でもう書いてしまったんだけど、ちょっと正確じゃない。正確にはスクリーンの外にうかんだイメージは、「やる気に満ち溢れた、監督とキャストとスタッフたち」なのだった。

 演技は見事なのに、演技しているようにしか見えない。スクリーンの向こうに、男、恩地の生き様も見えてこなかったし、社会の捻れとそれに翻弄される仰天の姿も見えてこなかった。

 いろいろ問題点はあると思う。カメラワークはテレビドラマ風だし、CGでつくった飛行機やゾウはディスカバリーチャンネル風だし、各キャラクターの描き方、特に悪役の描き方は水戸黄門風。でも何より問題なのは、作り手に活字から拡げたイメージがなかった(か、あってもそれを映画作りに活かせなかった)ことなのでは、と思う。

 ただ、冒頭部分だけは強烈な力があった。乗客やクルーがそれぞれの背景を背負い、スクリーンの向こうの白い光に消えていくシーン。それだけでよかった。特撮なんていらない。

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og