劇場公開日 2009年10月10日

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「匣のなかの光るものはなんだ!」パンドラの匣 yoshinodeboさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0匣のなかの光るものはなんだ!

2009年10月2日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

幸せ

萌える

いままでのサナトリウム
を題材にしたものとは明らかに違う
(本作では、『健康道場』の名称)
それは死に接する悲しさがウリだった
(その世界はその世界で好きなのですが)

しかし本作は死や、病気がすぐそばにあるのに、
明るい、かたくなな前向きさ、日なたに向かっていく
活力あるポップの表現
これが、太宰治の『軽み』らしい。

小説が映画の原作なのでコトバが重要で
力を持つのはあたりまえだが
これほど、コトバや音にこだわった映画は始めて
文章のうつくしさ、音の響きの綺麗さを
ジャズと合わせて耳に届ける
ナレーションによる音とコトバ
韻を踏むセリフ、あいさつの繰り返しの効果

あるいは、急展開する押入れでの
コトバの氾濫と、音楽のテンポアップ
動揺、期待が表現された部分は
全編のなかでも異彩を放ち印象に残った。

配役は
なよっと見えて気概ある骨太さを好演し
新しい男にふさわしい 染谷将太
小悪魔風予測不能、まわりを元気にする茶目っ気ある 仲里依紗
クールなモダンボーイ 窪塚洋介
おんなっぷりと心に強く芯のあるアネゴ肌 川上未映子
他にも、チャーミングな魅力ある健康道場の面々、適材適所好適
なぞを残すは匣の外の黒子

それから、付け加えたいのが、
ポスターと、チラシ、宣伝材のアートの美しさ
紙質を吟味するのは、当たり前で
緑青色グラデーションの出し方、切り替え、配置のバランスが絶妙
今年一番、きれいなポスター、チラシだ。

映画予告も、本編と同じ、コトバが韻を踏む醍醐味
早いカット割りと、映像の不思議さ。
本編を見に行きたくなる
派手な映像でなくても人を惹きつける好例。

コトバ、音、美術、役者、映像すべてに凝り
独特の世界観をみせてくれた優秀作品です。

yoshinodebo