「アニメーションの域を超える質の高さ」ヒックとドラゴン kakao_2rises4さんの映画レビュー(感想・評価)
アニメーションの域を超える質の高さ
全体的に相当質の高い作品である事は間違いない。まずは映像。ドラゴンの皮膚はゴツゴツ感が出てたし、草とか家も実写のような質感で『トイ・ストーリー』レベルに良かった。また明暗の具合も絶妙で、特に光が抑えられている場面(曇りや夜)の明暗は素晴らしい。ロジャー・ディーキンスの起用は素晴らしい采配だったと思う。脚本はこれ以上ないくらい見事な出来になっている。おかしな所や矛盾点は見受けられないし、高揚感を味わえる展開が幾つもある。その為の説明・過程描写は過剰でもなければ不足でもなく適度な感じ。テンポよく緩急もあるので飽きの来ない構成になっている。何よりもヒックを中心として出てくるキャラクターが一様に成長するストーリー自体が良い。アクションも最高で、この映画の場合は特に飛行アクションが良い。飛行訓練の一度目、アスティに嘘がばれた後の二度目、そしてクライマックスの三度目と全てシチュエーションを変えながら、且つスペクタクルなシーンになっているので観ていて本当に気持ちが良い。さらに社会的テーマを備えているというのも凡庸なアクション映画とは一線を画する点だ。ドラゴンとバイギングの敵対関係は、バイキング側がドラゴンの生態を理解しようとせず偏見を持ってしまっている事が原因である。このバイキング側の一方的な偏見による争いは、即ち実社会におけるあらゆる物事への思い込みの危うさを暗示している。テーマ設定はなるべく万人に通じる普遍的なものが求められ、この映画はその点もクリアしている。加えてドラゴンと共存するという選択は、最後の戦いには不可欠な要素であり、動物愛護的なメッセージ性もあるので良い。声優についても字幕と吹替両方とも素晴らしく、吹替も意外なくらいキャラクターと声質が一致する。一つ一つの言い回しまでも面白いのでこの映画は普通に最高の一作に仕上がっていると言える。