縞模様のパジャマの少年のレビュー・感想・評価
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救いがない
正直観た後憂鬱になる
たくさん考えさせられる
ブルーノが無知であり純粋であることは、彼に友人をもたらし、楽しみを与えた
芋の皮を剥く老人と、縞模様のパジャマの少年はブルーノと関っている時だけは、家畜以下のユダヤ人労働者ではなく、人間であった
父親は正しい軍人であると信じたかったブルーノはあの映画で父親を信じただろう。
真実を知って悲劇を迎えるラストはわかっていてもなんともいえない(悲しさともむなしさともいえない)気持ちであふれる
父親はあの時代のあの国では正しい軍人だったのだろう。
あのラストの後、彼は少しでも変わったのだろうか。
しかしきっと何も変わらないのだろう
縞模様のパジャマの少年
イギリス映画。1時間34分。アイルランド人作家 ジョン ボインの短編小説を映画化したもの。ジョン ボインは1971年生まれの戦争を知らない 若い世代の作家だ。岩波書店から千葉茂樹訳で、本が出ている。
映画監督は、マーク ハーマン
音楽は ジェームス ホーナー
撮影はハンガリー ブタペストで行われた。
今年になって ナチズムをテーマにした映画が続いている。アカデミー賞受賞の「愛を読む人」、トム クルーズの「ワリキューレ」、それと、007ジェームスボンドのダニエル クレイグが主役を演じている「DEFIANCE」だ。どれもなかなか重いが 観る価値のある映画だ。
キャストは、
ブルーノ:エイサ バターフィールド
シュメル:ジャック スキャロン
父親 :デビッド シューリス
姉 :アンバー ビーテイー
母親 :べラ ファーミ
ストーリーは
8歳のブルーノは 軍人の父親と、優しい母親と12歳の姉の4人家族で ベルリンに住んでいる。
戦争が始まっていて、大人たちの顔色は冴えないが 学校には たくさんの友達がいるから 毎日が楽しくてたまらない。ブルーノは、軍人の父親が 職場でどんな仕事をしているのか知らないが、男の子にとっては 父親はいつもヒーローだ。
ある日 父親が ベルリンから地方に転勤になって、家族そろって引越すことになった。ちょっと、寂しい友達との別れ、、、ブルーノは 田舎の新しい家に 慣れようとする。しかし、奇妙なことにブルーノの家は 他のどの家からも離れた森のなかにあり、高い鉄条網に張り巡らされ、門には24時間軍人が警備をしている。家には とても怖い父親の秘書も一緒に住んでいて、息が詰まりそうな 緊張した空気が漂っている。
ブルーノの部屋から背伸びをして 高窓から外を覗くと 遠くにスポーツ場のようなフィールドが見える。おかしなことに そこには沢山のパジャマ姿の人々が住んでいるようだ。台所を覗いてみると こんどは ズボンだけ縞模様のパジャマを履いて 貧しい身なりの年寄りが 下働きをしている。子供の目から見ても 異常に見える縞模様のパジャマ姿の人について 父親に聞いても 母親に問いただしても 大人たちは困った顔をして 話題をはぐらかせるばかりだ。
引越しをして何が退屈か と言うと学校に行けなくなって、友達が一人も出来ないことだ。ブルーノは退屈で退屈で仕方がない。
4歳年上の姉は 父の秘書として家に居る 若いハンサムな軍人に恋をしていて、ブルーノをうるさがって、邪険にするばかりだ。彼女は自分の部屋にアドルフ ヒットラーの写真を張り、軍歌に心を躍らせて、秘書の後を追いかけてばかりいる。
ある日 家に誰もいないとき、ブルーノは 庭のブランコから落ちて、怪我をする。介抱して適切な傷の処置をしてくれたのは パジャマのズボンを履いた 台所の下働きをしている年寄りだった。傷の手当てをしてもらいながら、ブルーノは 男が 今はジャガイモの皮をむいているが 昔はドクターだったことを知る。
友達がいない、話し相手がいない、そんな中でブルーノの不満とやり場のない疑問は膨れ上がるばかりだ。
ある日、ブルーノは 物置小屋の小窓から 誰にも気付かれずに家の外に出られることを発見する。そっと 家の外に出てみると 外は美しい緑の林だった。縞模様の人々の居る方向に行ってみると 鉄条網のフェンスで仕切ってある その中に 男の子が座っていた。話しかけてみると、パジャマ姿の男の子は 自分と同じ8歳で、シュメルという子だということがわかる。シュメルはフェンスのなかで、人々が何をしているのか ブルーノには言わない。ブルーノは シュメルがユダヤ人だと 教えられるが それがどんな意味を持つのか わからない。ただ、引越し以来 初めて友達ができたことが嬉しくてたまらない。
ブルーノは次の日には チョコレートを持って、またその次の日には サンドイッチを持って シュメルに会いに来る。
ある日、ブルーノは自分の家の台所で、グラス磨きをさせられているシュメルを発見する。グラスの細かいところを磨ける小さな手が必要だったので 手伝いに呼ばれたものだった。いつものように、ブルーノはシュメルに お菓子を与える。それを 怖い軍人の秘書に 見つけられて詰問され、ブルーノは叱られるのがこわくなって シュメルにお菓子をあげたのは自分ではない シュメルが盗んだのだ、と言ってしまう。
翌日、ブルーノは卑怯だった自分を責めながら シュメルのキャンプに行く。シュメルは見るも無残に 殴られて怪我をしている。それでも、ブルーノが謝ると、許すと言ってくれたシュメルにブルーノは このたった一人の友達を もう二度と裏切らないことにしようと心に決める。そんなシュメルは、自分の父親が突然居なくなってしまったことを、とても心配している。ブルーノは、自分のために みんなと同じパジャマを持ってきてくれたら 鉄条網の下を掘って 下からキャンプに忍び込み シュメルと一緒に父親を探してあげようと 思い立つ。
一方、家庭では 母親は夫を信頼 尊敬してきたが 子供達を連れて引っ越してきたところが ユダヤ人収容所に隣接しているとは、移ってくるまで思ってもみなかった。また、無用意な秘書の言葉から キャンプの煙突から終始 煙が出て 嫌な匂いがするのは ユダヤ人を処分しているからだ ということを知ってしまう。妻は夫と対立して、そのような仕事をする夫と一緒に暮らすことはできない と主張する。そして、遂に子供達を連れて 別の土地に移り 夫とは別居することにする。ブルーノは また引越しすることを知らされて、シュメルにはもう 会えないことを知らされる。
出発の日の朝、シャベルを持って ブルーノは シュメルとの約束を果たす為に フェンスの下を掘る。子供が辛うじて通れる隙間ができると、ブルーノはシュメルが持ってきたパジャマに着替えて、二人でシュメルの父親を探しにキャンプの小屋から小屋へと、探索しながら走る。ある小屋では、沢山の男達が集められて何かを待っている。と、突然、軍人達に押し出されて、ブルーノとシュメルも 群集にもみくちゃにされながら コンクリートの部屋に追い込まれて、、、、。
というお話。
原作以上に 映画が とてもよくできている。音楽がめっぽう良い。音楽が映画の画面にぴったり寄り添って 効果的に観る物の視聴覚を興奮させ、喜ばせ 悲しませ 驚き 嘆息させて、すべてを経験させてくれる。映画の音楽がすごく良くて、映画を見ていて心地よい と心から感じたのは、最近ではクリント イーストウッドの「グラントリノ」以来だ。
最後の方の見ている人の不安感 恐怖感 そして、それが押しつぶされて 長い長い救いのない嘆きに変わるときに 音楽が心に響く。ジェームス ホーナーと言う人の音作りに、今後も注目していこう。
映画で秀逸なのは、8歳の子供の役者だ。くもりのない子供の瞳 という言葉があるが 二人の子供がまさに それだ。世界や自分のまわりで 何が起こっているのか わからないでいるブルーノの 子供の目に映る光景は、いつもおなかを空かしているシュメルであり、いつも嫌な臭いの煙を吐き出している煙突や 怖い顔の秘書であり、疑問と不安ばかりが増長していく。
ある日 家に軍人達が集まり 映写会をしている。ドイツが他国にむけてユダヤ人キャンプを様子を宣伝するためのプロパガンダというか、エクスキュースのフィルムだ。ユダヤ人はキャンプの中で、安全で楽しい生活を保障されている、家族は一緒で、良い食事を与えられ、サッカースポーツやゲームに親しみ、何不自由なくキャンプ生活をしている という映像だ。これを盗み見て、ブルーノは 嬉しくなって、思わず父親に抱きつくシーンが印象的だ。ブルーノにとって 父親はやっぱりヒーローだ。疑うことなどできない。
配役では、自分の任務に何の疑問も持たない、今までの歴史になかった特別の国 ドイツ帝国を作るという信念に凝り固まっている石頭の父親に、デビット シューリスは、適役だ。
ナチズムの正体を徐々に知ってしまい、良心の痛みから病人のように やつれていく母親役の、べラ ファーミガが とても良い。
そのとき、その場に居ると 人は外から客観的に 何が起こっているのかわからない。気をつけていないと 自分が踏みつぶしている生き物が 見えない。状況をみきわめて、何が起こっているのか 知ること。そんな中で さらに良心的に生きるということが、どんなに難しいことなのか、改めて思った。
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