花の生涯 梅蘭芳 : インタビュー
チャン・ツィイー、レオン・ライ インタビュー
――この作品に出演するにあたり、「さらば、わが愛/覇王別姫 」のレスリー・チャンを意識したり、プレッシャーを感じたことはありましたか?
レオン・ライ「僕も20年近く役者をやっているので、マスコミが僕からどんなことを聞き出したいのかは分かっているつもりです。たとえばレスリーの『覇王別姫』と僕の『梅蘭芳』はどこがどう違うのか、ですよね。そもそも『覇王別姫』は梅蘭芳の持つ100以上の演目の1つで、『梅蘭芳』は梅蘭芳の私生活を描いているのだから、この2本の映画はまったく異なる作品なんです。それでも皆さんはどうしても比較したいようだから、僕の言葉でその考え方を変えることはできないでしょうね。比較されることには慣れているので、むしろプレッシャーは全然なく、自分なりに理解して演じればいいんだと思ってやっていました。
それと、亡くなったレスリーのことは僕もいつも偲んでいますし、きっと皆さんも同じ気持ちだと思います。とにかくこの映画を見てもらえれば、この2本がまったく別の映画だって分かってもらえるはずです」
――ツィイーさんは京劇の男形スターを演じていますが、演じる難しさはありましたか?
チャン・ツィイー「一番難しいと感じたのは京劇を習い始めたときでした。同じ役者でも山を隔てたようにまったく違う世界なんです。京劇は幼い頃に見たり聞いたりすることはあっても、私にはとても遠い存在だったので、自分で衣装を着けて演じるのは本当に難しかったです。靴を履いたときの歩き方、扇子の持ち方、髭を付けたときどう撫でるのか、すべてを1から勉強しなければならず、まるで赤ん坊が歩き方を覚えるようなものでした。いちいち最初から教わらないといけないので、怠けることなどできません。どのくらい努力をしたかは目に見えて分かってしまうんです。京劇のシーンはほんの少ししかありませんが、それでも私たちがどれだけ苦労したか分かっていただけると思います」
――今年のベルリン映画祭に参加していますが、10年前にもそれぞれの作品で参加したそうですね。この10年間を振り返って、変わったこと、変わってないと感じることはなんですか?
チャン・ツィイー「“環境”に関しては、変わっていないはずがないですよね。10年前はインターネットも全然発展していなかったので、当時は映画祭に参加しても、帰国して初めて報道を見てリアクションするような状況でした。でも今はメディアが熱狂的に私たちを追いかけてくるので、人目に晒される機会も増えたし、観客側も映画に触れる機会が増えました。そして『金熊、銀熊って何だろう?』ぐらいの知識でこの世界に入った私ですが、現在に至るまでに映画の知識をより深めることができたし、今では金熊、銀熊がどれほどの力を持つのか理解できます。また、ただ仕事をこなしていた昔とは違い、今は仕事を“誰とどうやるのか”“やるか、やらないか”など選択できるようになりました。
こうした環境で生きているのでプレッシャーを感じることも多いですが、一番大事なのは、自由や自分らしい生活を求める私の気持ちだと考えているので、そういう意味では何も変わっていないと思います」
レオン・ライ「10年前と今回、なぜぴったり10年なんでしょうね? まあ10年前行った人で今回は行けなかった人もいるわけで、その点、僕はいつも誰かがお金を出してくれたお陰でちょくちょくベルリンに行くことができた訳ですが(笑)。
ちなみに10年前はピーター・チャン(陳可辛)監督で、今回はチェン・カイコー(陳凱歌)監督なので“陳(チャン)”で繋がっている。そういえばマギー・チャン(張曼玉)もいたのかな? 今回はチャン・ツィイー(章子怡)ですが字が違いますね……僕が何が言いたいかというと、いろんな人と出会い一緒に仕事をすることは、運命で定められていると感じるんです。それは海の上の船のようなもので、努力しなければ沈没してしまう。だから自分の目指す方向に向かって大好きなアートの世界を極めていこうといつも思っています」