リリィ、はちみつ色の秘密 : 映画評論・批評
2009年3月17日更新
2009年3月20日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー
少女の成長と人種差別問題を絡ませた美しい映画
少女の成長と人種差別問題を絡ませた美しい映画だ。幼少期に過失で母親を死なせたトラウマを抱える14歳のリリィ(ダコタ・ファニング)が、自分に過酷な父親に反発して家出。黒人3姉妹のボートライト家に身を寄せて、自分を愛し受け入れてくれる居場所をみつけていく物語だ。
ドラマの設定は1964年の南部。公民権法は設定されたが、まだまだ差別は厳しく、リリィが家出したきっかけも、選挙権を登録しようとした黒人メイドのロザリンが不当に迫害されたことだ。俳優のジャック・パランスが黒人の恋人と一緒に映画を見ようとして大騒ぎになるエピソードも出てくる。そんな時代だが、養蜂業を成功させているボートライト姉妹は、誇りを持ち、地域に根ざして生きている。これまで映画では見たことがないようなファミリーだ。声高に差別反対を叫ばず、リリィが黒人の家族と暮らすことを選んだところに、変化が始まった64年という年が表れている。
アリシア・キーズ、ソフィー・オコネドー、ジェニファー・ハドソンなど黒人女優が豪華で個性的。特に、クイーン・ラティファ演じる長女オーガストが大地の豊かさを思わせる素晴らしいキャラクターだ。蜜蜂の生態になぞらえて、コミュニケーションを持つにはまず愛を送ることとリリィに教える、その深みのある言葉と声に感動した。
(森山京子)