「インド下層社会の描き方の大迫力がすごい」スラムドッグ$ミリオネア Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
インド下層社会の描き方の大迫力がすごい
総合85点 ( ストーリー:75点|キャスト:80点|演出:90点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
インドの貧困についてのひどい話は直接・間接にいくらか聞いていたが、それをこのような画像と物語つきで見せられるとその凄まじさに改めて圧倒される。ごみ廃棄場に住むというような普通の貧困生活だけでも十分厳しいのに、民族対立や孤児を食い物にする犯罪者まで登場し、証拠もないのに警察に拘束されて拷問されたりする社会もあり、その世界にどんどんと引き込まれてしまった。ここが最も印象に残ったし、他の映画と比較しても相当に迫力があった。
ひどい少年時代の生活を描いた前半の描写と話は素晴らしかったが、物語の本流はやや平凡だった。物語はクイズに答え続けて幸せに近づいていくという物語はいいし、それに何故ジャマールが答えられるのかを語るのもいい。ただし問題の答えをたまたま知っているというそんな偶然が何度も続くのにはちょっと疑問符がつく。悪に染まった兄サリームが突然に自らの死を覚悟してまで弟とラティカのために裏切るのも唐突だったし、ましてラティカをただ逃がすだけでなく、彼女に執心の犯罪組織の親玉までを殺してその後の憂いをきっちりと絶つというのは主人公に都合がよすぎる。これがなければ大金を得たとしても犯罪組織に追われ続けるのだから、簡単に幸せにはなれなかったはずなので、ここも兄の突然の変心と自己犠牲いう偶然に頼りすぎていると思った。
総合としてはかなりの力作でした。やはりスラムと貧困とを背景にした少年時代の描き方が秀逸。物語は色々と偶然に頼る部分はあるけれど、困難を乗り越えて幸せのために努力する姿もいいし、人生の逆転劇な結末もすっきりとまとめていました。