「カレーというよりはタンドリーチキン」スラムドッグ$ミリオネア くるまやさんさんの映画レビュー(感想・評価)
カレーというよりはタンドリーチキン
踊られてしまった。
そしたらもう敵わない!
エンディング、インド人もびっくりのダンシングで悲惨なそれまでがふわっと宙に舞ってどこかへ飛んでいく。その後味がダニーボイルっぽいなと思った。物語にすっかり心を引き込んでおいて、最後にこちら側へボールをパスする感じ。それでハッとして、冴え渡った気分になる。これがソーカイカン?
それにしても
生きていくこと=サバイバルであり、
誰かを信じて手を取り合うことも、誰かの手を振り払い裏切ることも、
同じようにある。みんなそうだ。
何かを得るためには何かが犠牲になる。
ということを誰もが、受容している、と思ったり、
そんな風に、裏切りや不条理に慣れ親しんでしまってる私に、
ジャマールの正義は正しく強く訴えかけてきた。
うっとうしいくらいに、揺ぎ無く、辛辣に。
だからスクリーンの暴力をみて、何にどう自分が反応し、感じているのか
突き止めてみるのが少し怖かった。
私の生活には一人でカフェに行ってルンルンするくらいの余裕があるから。
子供たちが走る姿、町の泥まみれのエネルギー、お腹に響く太鼓の音、
そこにある全てを巻き込んで行くリズム。
繰り返される辛い仕打ちに、どうして心が折れてしまわないのか、って
初恋の思い出など捨ててしまえば楽になるのに、って思った。
激流に身を任せてしまえばいいのにって。
最後にクイズに正解したことに、私は少し驚いた。
いきなりのハッピーエンドに、途惑って違和感があった。
それで、そのまま、あのダンス!
陽気すぎる!
そのパスをうけて、たじろいだけど、大事にとっておこうと思いました。
ただ現実をえぐり出すのではなく、
堂々とミラクルを起こしてみせる、監督の強い意思や姿勢はさすが!
映画ってやっぱり素敵だとそればっかりで楽しげな帰り道。
ただ楽しいだけじゃなく、楽しむほうを選択するってこと。