劇場公開日 2009年4月18日

「Danny Boyle」スラムドッグ$ミリオネア Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5Danny Boyle

2019年1月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

難しい

インドというこれからどんどん世界に出てくるであろう国をかなり痛烈に描いた作品。
ニナさんはこの作品を観て、どのような感情を持っただろうか。私は率直に言って、最後のハッピーエンドよりも、そこにいく過程のあまりにも痛烈なインドの描写によって、率直に楽しんではいけないような気がしたまま、映画が終わってしまった。ハッピーエンドなだけに、それのコントラストとして、インドをかなり痛々しく描いているので、ちょっと悲しく感じてしまいました。

この作品がアカデミー賞に数多く選ばれたのはテーマなどからも頷ける。しかし、ここまで世界的に知られ、楽しまれているのはかなり意外だなと観終わって感じた。全くと言っていいほど単純ではなく、純愛映画と呼ぶにはあまりにもシリアスな描写が多かった。メインのストーリーは、主人公とスラムで出会った女性との深い愛だが、2時間の中に描かれるのは、それを拒む社会の闇だった。どちらかというとその闇を前面に押し出したような作り。2000万ルピーを獲得できるのかどうかなんていうのは本当に必要だったのかと思うほど、そこはただの道具だった。問題の答えがこれまでの人生関わっていたというこの脚本のキーとなるところだが、そこが一番謎だった。全ては繋がっているように見えるのだが、根本がつながっていない。「なぜ、そうも偶然に彼は人生から答えを見つけ出せたのか。」そこが全く繋がらないのだから、そこがこの作品のメインでないことは明らかだ。インドの社会状況や歴史、宗教、格差の問題を体験するというのがこの作品の意義なのだから、後半はどうでもよく感じた。
まず、キャラクターの3人に感情移入するところは、銃のところあたりからなくなったし、愛に発展したところで、興行収入狙ったのかなって思ってしまった。
それ以上にその辺りから、警察やテレビ局などの影なんかの方がよっぽど新鮮で濃かった。

確かに、ダニーボイルの映画の撮り方、躍動感、景気の広さはすごい。お金とアイデアがかかっている。さらに、アンソニー・ドッド・マントルの一貫した照明や、黒澤明をも思い起こさせる、エッジライト集団の使い方は素晴らしい。クリス・ディゲンズの駆け巡るような編集も、ダニーボイルの伝えたいことを理解した上での表現が素晴らしい。エドガーライトの編集も務めているなんて、ビートの猛者だ。

ぜひ皆さんの感想を聞きたい。

Editing Tell Us