「文字通り壮大なスケールの歴史活劇」アラビアのロレンス 完全版 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
文字通り壮大なスケールの歴史活劇
いくら名作でも自分が生まれる前に公開された映画は後追いで観るしかないけれど、新作がどんどん公開される中で正直なところそのタイミングが意外と難しい。
昨年末ピーター・オトゥールが亡くなったことがきっかけというのも何だか申し訳ないような気もするけれど、これは映画好きならば観ておかねばという作品だと痛感しました。
第一次大戦中、中東戦線においてアラブ人を率いてトルコ軍を打ち破った実在の英雄T・E・ロレンスが主人公ということで、割と単純な英雄礼賛映画だと思って観始めたら、これがとんでもない間違いだった。
確かに前半の山場、アカバ攻略、続く鉄道爆破作戦辺りまでは、アラブ人に受け入れられ、敬愛され、ロレンスは全能感に近いものさえ感じ始めている。しかし、アラブ人でないことを見破られトルコ軍に捕まり拷問(おそらくレイプを含む)を受けたことで彼の全能感、自信は粉々に打ち砕かれる。
自らをキリストになぞらえ、透明人間だとさえうそぶいていた彼は、自分は特別な人間などではなかった、アラブ人になったつもりでも目の色やはだの色は変えられないということを思い知らされる。
そして、拷問を受けたことでゲイだ(異論はあるでしょうが)と自覚し、自分が普通じゃないということも思い知らされる。
普通の人間だということと、普通じゃないということを同時に思い知らされるというこのアンビバレンス。
戦争の英雄による冒険活劇だと思っていたものは、実はひとりの男の自分探し、居場所探しの物語だった。
厳しい自然環境の場所というのは概して美しくて、是非大きなスクリーンで観てみたいシーンばかり。
地平線から上る朝日、風によって作られる砂紋。今ならすべてCGで出来てしまうのだろうが、ここには本物の美しさがある。
今ではこのスケールで全編ロケの作品は望めないだろう。
ここに描かれたロレンスの英雄像については、特にアラブ側からの異論もあるようだが、だからと言って、この作品の価値が下がることはない。
本当にすごい作品ですよね。^ ^
文学作品と言ってもいいくらい奥が深いと思いました。本当に映画館の大スクリーン、大音響で観るべき映画!2023年6月現在、午前十時の映画祭での再上映に感謝です。