「「生」に詳しくない男のグラントリノ」グラン・トリノ ターコイズさんの映画レビュー(感想・評価)
「生」に詳しくない男のグラントリノ
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クリント・イーストウッド演じるウォルトという男は稀代の正直者なのだ。正直だから懺悔は好まない。それは彼にとっては一世一代の大仕事。
「触るものみな傷つける」という勢いの頑ななウォルト。愛した妻の死で孤独と頑なさに拍車がかかっている。
この作品では若い牧師がいい味を出している。彼の指摘は正しい。ウォルトが詳しくなってしまったのは「死」であって「生」ではない。正直な彼は自分がおかしたことをごまかせずにいるので、「死」と「罪」への意識が常態化しどう生きるのか考えることがうまくこなせないでいる。
彼はうまく子供と向き合えず子供とも孫とも絆を持ててない。だから彼は大事にしてきたグラントリノを託す気になれないでいる。未来への手がかりがない。
そんな彼が未来への手がかりを得る。痛みを負いながらも熟考し動き出すウォルトのあの一日は、彼にとって「生」の実感を憶えるのに十分だったんじゃないか。
大事なのは時間の長さでもなく血縁でもなく、希望なのかもしれない。
ラストシーンには希望がみえた。
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