「じじいの勲章。」グラン・トリノ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
じじいの勲章。
我が家にも手のつけられない偏屈ジイさんがひとりいる。
この頑固ジジイときたら、今の若者の全てが気に入らないx
あっちで文句をつけ、こっちで愚痴を言い、でも結局は
何も変わらないことに嫌気がさしては、ブ~ブ~唸っている。
アレ?これってイーストウッドのポーランドじじいと一緒だv
この映画、おそらく私位の歳の人間が観れば大感動だが、
鼻ピにヘソ出しルックの若者が観たら、なんて言うだろう。
「あ~つまらねぇ!この説教ジジイが!」
そう思ったら大成功!…という卿の高笑いが聞こえてくる。
10代でこの感動を理解できれば、相当の年寄りになれる。
愛車グラン・トリノは、大事に温存されてきたこのジイさんの
価値観そのものなのだ。誰にも触らせず受け付けもしない。
孤高のイメージが自身の孤独を暗示し始めてもこのジイさん、
相変わらず悪態をついて、他を一蹴する。
身内にまで嫌われているこの男の一挙手一投足がいちいち
可笑しくて、ずーっと笑いっぱなし。こんな頑固ジジイを諭す、
27歳の童貞野郎(神父さん)のめげないしつこさにも脱帽した。
なのでこの映画が面白くなかった若者には申し訳ないが、
私には文句をつけようにも見当たらない。「チェンジリング」で
あんなに感動したばかりなのに、もうすっかり今作の虜だ。
そしておそらくそれが「今の自分」だからなのだ、と感じる。
長い人生を生きてきたポーランドじじいには、幾多の陰惨な
経験もあったろうし、愛妻との素晴らしい想い出もあったろう。
普通人間は、そうやって人生を歩む毎に丸くなろうものを(爆)
彼は、俺を誰だと思ってるんだ!と言わんばかりに猛々しい。
イーストウッド卿の、本性はこうかもしれない^^;
懺悔とか、ちゃんとしているのかしら…(大きなお世話ですね)
しかし作品としての資質は、相変わらずまったく無駄がなく、
ゆったりしているのにテンポが乱れず、すべてのドラマが
順序良く統合されていく。無名のキャスト達が喋る台詞にも
何かしらの意味があり無駄がない。ギャグまで的を突く始末。
隣に越してきたモン族(ホンモノらしい)姉弟との交流を通して、
改めて自身を学び始めた彼に転機が訪れ、やがて彼は
彼らを守るためにチンピラに正義の審判を下すのだが…。
おおよその予想通りだったラストは、もちろん悲しくて、
泣けはしたものの、なんともいえない清涼感にも包まれた。
多くの西部劇でドンパチを演じ分けてきた彼のカッコ良さが、
こういう形で次世代に語られるとは、実は思っていなかった。
彼はすでに若者たちの未来を見渡しているのだ。
エンディングテーマに酔いしれつつ(頑固な声で、唄ってます)
こんな遺言状のような作品を作ってしまった彼に脱帽するものの、
いや~まだまだ。ポーランドじじいには卿として君臨してほしい。
傑作なんか作りやがって。このバカタレが。(T_T)
(イカれイタ公も、アイルランドの酔っ払いも、そう思ってるぞ)