BALLAD 名もなき恋のうた : 映画評論・批評
2009年9月1日更新
2009年9月5日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
オリジナルへのリスペクトを強く感じる、エンタテインメント大作
オリジナルに対しての愛が感じられないアニメ・コミックの実写映画化が多いなか、VFX畑出身の山崎貴監督は、前作に続いて裏切ることはなかった。ある意味、「ヤッターマン」と同じく、オリジナルへのリスペクトを強く感じる、エンタテインメント大作に仕上がったといえる。
監督が“名もなき”小国の武将と幼馴染の姫との悲恋以上にこだわった点は、舞台となる春日の国に建つ山城と、そこで展開されるリアルな戦だ。アジア映画の合戦シーンといえば、やはり「レッドクリフ」と比較してしまうかもしれない。とはいえ、歴史事実に基づく小国同士の戦いを開戦から停戦まで描いている点は、オリジナルと変わらず。つまり、国レベルの戦をありえない描写で描いた「レッドクリフ」と比較するのは、あまりにナンセンスなのである。
また、当初は不安に感じたキャストが大健闘するなか、野伏せりやおにぎりなど、ファンがニンマリする名エピソードを盛り込み、そのカット割などからも、監督の愛を感じることができるだろう。そして、隣国の大名・高虎や真一少年の両親など、人間ドラマを描くことなどから、オリジナルを知らない観客にもしっかりアピール。だが、お下劣ギャグなど、「クレヨンしんちゃん」独特のキャラクターをあえて消そうとしたことで、真一少年と又兵衛・廉姫との関係性が弱まってしまった感は否めない。
手放しで大絶賛とはいかないが、ここまでやってくれて、文句を言うのはバチが当たる。宇宙戦争だろうが、宮崎アニメだろうが、山崎監督は今後も無謀な実写映画化を成功させてくれるに違いない!
(くれい響)