「戦う相手、それは己の弱さ!自分の陰を叩きのめせ!シャドウボクシングの意味は深いのだ!」ザ・ファイター Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
戦う相手、それは己の弱さ!自分の陰を叩きのめせ!シャドウボクシングの意味は深いのだ!
家族は人間の基本。兄との愛を取るか、弟は恋人を選ぶのか?2人の間で板挟みになる実際にいるボクサーのミッキーとデッキーと、その母と父、そして恋人シャーリーとの家族の物語は、思ったより地味で、控えめな後味を私に残してくれた。
ボクシングの試合のシーンなどの迫力迫る映像で、観客の心をグングン引っ張り込む半面、静かなに地味に、淡々と兄弟で、同じボクサーと言うファイターの道を選んで歩んで生きて来た2人の兄弟の心の葛藤を静かに語っていく。
兄のクリスチャン・ベール演じるディッキーは有名ボクサーだったが、世界チャンピオンの座を得る事が出来ずに、次第に薬物に溺れ、身を崩していく半端者で、負け犬の人生へと転落して行く一方で、その様を観ながら、年の離れた弟のマーク・ウォールバーグ演じるミッキーは地道に、そして着実に実力を付けてゆき、彼には未だこれから未来が有る。何かに付けて比較対照視されながら育った彼らの関係が何時しか、次第に兄と弟の立場が逆転する様な運命へと転換して行く。兄弟でるから、兄は本当に弟を可愛がり愛していても、同時に弟は同業のライバルでもある。兄と弟血が繋がっているだけに複雑に交差する二人の感情のぶつかり合い、そして、そこへ両親のこの二人に対する思いも更に重なり合い、事態はより深刻になって行く。
親子でも、大人になってそれぞれの家庭を持てば、それぞれ違った価値観や生活スタイルが生れて来るものだし、親は何時までも、子供を支配する事は出来ない、例え、仕事との繋がりを併せ持ち、マネージャーとて必要不可欠な存在と思っている関係でも、必ず子供は親離れし、親も子離れしなくてはならない時期が来る。
家族経営同然の、ボクシング一家ともなれば、お金の問題も絡んでくるので、中々腐れ縁は断ちきれないと言う負の連鎖は、いかにして解き離す事が可能なのか?
兄弟離れを迫られ、自分の意志を貫き通す時が弟の人生には必ずやって来る。そして兄も弟に自分の座を譲る日が来る。
人生では永遠に、若く、優秀で中心的存在で有り続ける事は不可能なのだ。
人生は常に移りゆく儚い束の間の夢!いつか自分の歩み築いて来た道でも、後輩にその道を譲る時が来る、何となく切ないけれど、こうして命が受け継がれてゆくこれも、自然が生き物に与えた愛の証だろう
「アーティスト」で「君にスターの座の席を譲るよ」と往年の大スタージョージが新星のペピーにスターの座を譲るシーンがチラリと頭を過り、切なくなってしまった!
この「ファイター」でもラスト兄貴が弟に、これからはまたこの町のお前がヒーローだと言っているシーンは、雨降っても最後は、地固まるので、気持ちの良いラスト爽やかで観ていてうれしかった!
人間、家族に限らず、どんな間柄の者同志でも、必ずやお互いが思いやりを持って、努力を重ね、自分の道を励んで貫き生きるなら、何時の日か必ずや、壊れかけた人間関係も改善出来るとこの話は実話を元に描いているだけに更に、喜びが増す!厳しい現実の世界で生きる私達に、更に厳しい現実を描く映画より、こう言うハッピーエンドは救われるのだ!