劇場公開日 2011年3月26日

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ザ・ファイター : 映画評論・批評

2011年3月17日更新

2011年3月26日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

ひと味ちがったボクシング映画。敵はモンスター家族にあり

ボクシング映画とブルーカラー映画は、ほぼ同義だ。「ロッキー」も「レイジング・ブル」も「ミリオンダラー・ベイビー」も、背後にあるのはブルーカラーの生活にほかならない。

ただ、「ザ・ファイター」のブルーカラー一家は、これまでになくややこしい。生活の形態が判然としないこともあるが、気質や言動が、どこか激しくとち狂っているのだ。

といっても、主人公ミッキー・ウォード(マーク・ウォールバーグ)がクレイジーなわけではない。彼はむしろ正常だ。無口で、善良で、控え目で、思いやりにも恵まれている。問題は、彼の異父兄ディッキー(クリスチャン・ベール)と母親アリス(メリッサ・レオ)だろう。手垢のついた言葉だが、彼らは「モンスター家族」だ。エゴが強く、無知と貪欲と薬物に汚染され、ミッキーの世話をするつもりが足をひっぱってばかりいる。

すると、映画は不思議な楕円形を描きはじめる。焦点はふたりの肉親だ。彼らが狂った動きを見せると楕円が伸縮し、つられてミッキーも振りまわされる。これはしんどい。

だが、ミッキーは心強い味方に出会う。酒場で働く気の強い娘シャーリーン(エイミー・アダムス)が、彼と家族の間に身体を張って割り込んできたからだ。

事態は微妙に変化する。連敗続きで一度はリングを去ったミッキーが、気を取り直して反撃を開始する様子は、ボクシング映画ならではの活力に満ちている。ベールとレオの(パロディすれすれの)怪演の陰に隠れがちだったウォールバーグも、無口と善良の機能を最大限に生かして善戦する。監督はデビッド・O・ラッセル。オフビートなタッチを得意とする才人だが、この映画であぶりだされた笑いと陰翳は彼の新境地だろう。背景となったマサチューセッツ州ローウェルのくたびれ加減も、映画に渋い味を添えている。

芝山幹郎

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