「路上のベートーヴェン」路上のソリスト everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
路上のベートーヴェン
難聴ではなく幻聴のベートーヴェンといった感じの音楽家Nathaniel。
精神疾患で会話がスムーズにいかないことも、平常心を失うこともあるけれど、街の雑踏すらメロディに聴こえる彼の心はとてもきれいそう。そしてとてもきれい好き。
人々に聴かせるために奏でるより、自分の心と天に向けて演奏している方が向いているようでした。
社会全体がオーケストラで、各人の旋律が合えば傑作になるけれど…
その枠組みからはみ出た人、ステージから落ちた人達は、雑音でしかないのだろうか。
彼らの音色に耳を傾ける価値はないのだろうか。
Nathanielの幸せは彼が決めること。
幻聴を消すためにあえて喧騒の中にいるのかなと思いました。
世間の幸せや価値観がそのまま当てはまる訳ではないことをシェルターの職員はよく理解しているようでした。
ホームレスさんを施設に入れても、また路上に消えて行ってしまう人は少なくないです。集団生活の規律が嫌だったり、新聞紙や段ボールの方が寝心地良くなってしまったり、高級ホテルの残飯が食べたくなってしまったり、聞くと理由は様々。
Steveの援助は、「普通の生活」がしたくても出来ないケースにはぴったりですが、「普通の生活」が無理な人には独善的になってしまう恐れがあり、人助けの難しさが描かれています。
いやらしいなと思ってしまうのは、
◯Juliardと聞かなければ、恐らく記事にしようとも思わなかったこと
◯他人の不幸を売っているにも関わらず、取材の対象でない時は、来ないでくれと言わんばかり
◯原作であるSteveの本がベストセラー…
◯「家族だと思ってくれ」などとNathanielに言っていたHollywoodの本作関係者達が、今では全く音沙汰ないこと…
売り上げの一部は、Nathanielと家族の支援や基金設立に使われたそうですが。
Nathanielの全財産を「ゴミ」と評していたSteveが、「友人」として悩み、出来ることは随分頑張られたと思いますけどね。
Nathanielのファッションが独特で(^_−)☆
覆面を被って自信なさげにうなだれているのと、
チェロに巨大ブラを着せて?いるのが面白かった
(^ ^)。
ちなみにスクリーンセーバーみたいだと低評価の映像シーンは、芸術家に多い共感覚を精一杯表現しているそうです。
“Life has a mind of its own.”
“I hope the whole world sleeps well.”