それでも恋するバルセロナ : インタビュー
自身初のアカデミー賞候補となった「ボルベール/帰郷」など、ペドロ・アルモドバル監督のミューズとして知られるペネロペ・クルスは、母国スペインを舞台とした本作では、ハビエル・バルデム扮する画家の元妻として登場。物語後半になって突如として現れる彼女は、その情熱的な人物像で観る者に強烈な印象を与え、本年度アカデミー助演女優賞を受賞。そんなペネロペに語ってもらった。(取材・文:はせがわいずみ)
ペネロペ・クルス インタビュー
「あのキスシーンの時は、見たこともないほど大勢の人が現場にいたわ」
――撮影前にウッディ・アレン監督とスペインについて話をしましたか?
「しなかったわ。打ち上げパーティでやっと少し話し込めたって感じだった。ウッディはスタッフ全員にとても優しいの。だから、クルーは全員彼のことを好きになったわ。実はクランクアップの時、彼からメガネをプレゼントされたの。私の宝物よ。彼は2つしか持っていないメガネのうちの1つを私にプレゼントしてくれたの」
――ペドロ・アルモドバル監督とアレン監督の演出の違いを教えてください。
「実は、ウッディもペドロもお互いをとても気に入っていて、ペドロは本作の成功に喜んで、“ウッディにおめでとうって伝えてくれ”って頼んだの。ウッディはウッディで、ペドロについて私にいろいろ質問するのよ。私は2人の伝言係なんだけど、その役割をとても気に入っているわ。2人とも、シリアスで深いことを話すけど、それが決して押しつけがましくなく、説教されているような感じがしない。ウィットとユーモアに富んでいて、皮肉も混ざっているからよ。2人ともキャラクターが何か大変な思いをすることで笑いを生むという映画を作っている。それこそ私たちの人生だと思わない?」
――マリアというキャラからどんなことを学びましたか?
「言葉にするのは難しいわ。だって、マリア自身になって、彼女の視点で考える時間がものすごく長かったもの。彼女がクレイジーだって言われるのも理解できるけど……。マリアはとても頭が良いのよ。ただ、物の見方がとても変わっているの。もし、彼女が今とは全然違うタイプの人たちに囲まれた生活を送っていたら、きっと精神病院に入れられてしまったことでしょうね。彼女はその点、ラッキーだった。そして、人生をおう歌しているわ」
――スカーレットとのキスシーンはどうでしたか?
「そのことについて、ずっと聞かれ続けてきたから、話すネタはもうないの。ジョークも使い果たしたし……。唯一覚えているのは、それまで見たこともないくらい大勢の人が現場にいたってこと。そう、関係者以外立ち入り禁止のセットなのに、みんな何かしら理由をつけて現場に顔を出していたわ(笑)」
――撮影前には緊張しますか?
「いつも緊張するわ。ペドロの作品の撮影がもうすぐ始まるけど、デビューの時と同じくらいとても緊張している。そうした緊張感がなくなったら、ほかのことを始める時が来たと思うべきなんじゃないかしら? 恐怖心なしで女優の仕事ができるとは思わない。なぜなら、とても抽象的で深遠なことをする仕事なんだもの。いつも撮影初日が一番コワイわ。そして、撮影中はいつもドキドキしている。俳優はみんなそうだと思うの」
――ハビエル・バルデムの俳優として素晴らしい点、人間として素晴らしい点はどんなところだと思いますか?
「俳優としての彼について話しましょう。なぜなら、彼は常に素晴らしい俳優だからよ。彼はカラフルなパレットを持っている。フアン・アントニオ役は、とても難しい役だから、ものすごく才能があって緻密な演技ができる俳優じゃないと無理。そんなキャラクターを、ハビエルはとても魅力的に演じた。難しいシーンの数々も、彼は本当にステキにこなしたわ。素晴らしい俳優よ」