アラトリステのレビュー・感想・評価
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男は寡黙で孤高であるべきか。
ツタヤの戦争映画コーナーにおいてあったし、歴史戦争モノかと思い鑑賞したら、いやはや、全然違った!!
淡々と粛々と話は綴られ、気がつけばエンドロール。
上映時間の合間には色々な要素のストーリーが散りばめられ、戦闘シーンはあくまでオマケ。
その間、主人公のアラトリステの生き方が淡々と粛々と綴られる。
そして残念ながら、原作未読のため、良い原作の映画化にありがちな消化不良感はしっかり味わう羽目に。
劇中のアラトリステの生き方には賛否両論あろう。
それでも精一杯生きて、精一杯の表現で人を愛した姿には感動するものがありました。
男はかくあるべきか、でも自分にはできないな、絶対・・・。
日本語字幕の問題点
私は、この映画の日本語字幕に、非常に大きな誤りがあると考えます。
主人公のアラトリステは、恋人の女優マリアと結婚できるとは、一瞬たりとも考えていません。彼がマリアにプロポーズしようとしたという印象を与える字幕は、間違っています。
アラトリステが首飾りを買う場面の、宝石商のセリフ、「その美しい方との将来を考えて…」は、プロポーズとも読める日本語です。しかし、本来のスペイン語は、「その方を繋ぎとめるため」程度に訳すべきセリフです。首飾りを贈って今の親密な関係を保ちたいという、遠回しの表現で、結婚を意味する言葉ではありません。
原作によると、マリアはトップ女優の華やかな地位を維持するために、大勢の有力なパトロンと肉体関係を持っています。マリアと結婚する男には、世間から「寝とられ男」と呼ばれ、蔑まれる覚悟が必要です。
誇り高い剣士のアラトリステが、そのような立場を受け入れるはずがないことは、原作を未読の方でも察しがつくと思います。首飾りはプロポーズではなく、頑固で不器用な男の精一杯の愛情表現なのです。
マリアがアラトリステに、結婚の話を切り出す場面の、実際のスペイン語の意味を知れば、アラトリステの心情が更にはっきりします。
アラトリステは、「もし結婚したら、お前に近づく最初の男を殺す。誰であろうと。俺は殺人罪で絞首刑になり、お前は再び未亡人だ」と語っています。
妻を寝とられる屈辱に耐えるくらいなら、マリアのもとへ来た最初のパトロンを切り殺し、逃げ隠れせずに逮捕される。大勢の見物人が注視する中、広場で堂々と絞首刑になるという意味です。
対するマリアも、結婚相手に贅沢な暮らしを約束できる自分を、誇りに思い、まだまだ小娘どもにトップの座は譲れぬと語っています。そのために、パトロンの存在は欠かせません。つまり二人は、愛し合っていても決して結婚できない間柄なのです。
アラトリステ役の俳優ヴィゴ・モーテンセンも、来日の際のインタビューで、「マリアとアラトリステは、互いのプライドゆえに擦れ違い、引き離されて終る。それが、この映画の最大の悲劇だ」と語っています。
映画のDVD化では字幕が監修されると聞き、修正後の字幕に期待しました。しかし、「プロポーズしようとした」という誤った設定が十分に正されなかったことが、残念でなりません。
(他のレビュー・サイトにも同様の意見を投稿しています)
舞台挨拶のヴィゴは若々しかった
栄光のスペインが没落を向かえつつある時代の物語。
傭兵のアラトリステは戦う。
友達の遺児を育てながら戦う。
そこまでして何故 彼は戦うのか。
歴史物は、その国のある程度の知識がないと辛い。
この作品もストーリーが小気味良いくらい、
ぼんぼん飛んでいくので、
油断するとすぐに置いていかれてしまう。
ディティールについてはかなり疑問を残したまま、
エンドロールを見る羽目になってしまったが、
その分奥行きがあり、
繰り返し楽しめる映画かも知れない。
話の軸は
アラトリステと彼が息子のように育てたイニゴとの葛藤と信頼。
アラトリステが愛したマリアとの愛情ドラマ、
イニゴが愛したアンヘリカとの愛情ドラマ、
そして、
アラトリステの友達との信頼関係、
様々な要素をストーリーの過程で描いています。
そんな中
イニゴが恋人のアンヘリカとイタリアへ駆け落ちしよう約束したのに
彼女は階段を降りながら考えるシーン。
駆け落ちせずに、このまま伯爵夫人になってしまえば、
子孫はみんな貴族でいられる。
でもイニゴの元へ行ったら。。。
当然の打算、妙に生々しい。
アラトリステが唯一愛した、マリア。
彼女は国王に見初められ、愛人になってしまうが、
この王様、女が大好き。
だから、新大陸から梅毒ももらってしまう。
当然、マリアもうつされてしまい、病院へ。
そんな彼女をアラトリステは見舞いに行く。
彼女の為に用意していたネックレスを
かけてあげるシーンは痛ましかった。
地に付いたリアルなシーンが
この映画の魅力に感じた。
さて、試写会後、ヴィゴがスペシャルゲストとして登場。
アラトリステで演じていた風貌よりも
とても若々しく、カッコ良かった。
でも、もう50歳なんですよね。
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