エグザイル 絆 : 映画評論・批評
2008年12月2日更新
2024年1月26日よりシネマート新宿ほかにてロードショー
映画の興奮に事欠かないトー・アクションの決定打
ここ数年のジョニー・トーの作品のレベルは多作にもかかわらず、世界最高水準を悠々とキープしている。香港映画の低調がいわれて久しいが、作品レベルからいえば現在が黄金期である。それはトーあってのことなのだ。「エレクション」「エレクション2」という、香港黒社会の成り立ちと現在のていたらくを描いた渾身の作品の後の虚脱期に、軽く気晴らしとして脚本なく撮影された「エグザイル/絆」の圧倒的なすばらしさ! 室内接近銃撃四戦のアイデア(ドア、カーテン、室内十数人の乱舞的乱れ撃ち)とかっこよさ! にはただただうなるしかない。屋外戦ではガン・マニア同士の寝返りのしびれる友愛。などなど映画の興奮に事欠かない作品なのだ。
外地に逃げ一件落着のはずの仲間の一人が妻と赤ん坊をともなって帰ってきて、殺す側と守る側に二手に分かれ幼友達全員が再会を果たす冒頭、ロマンティシズムと緊張にあふれた“間”と構図は映画史に残るだろう。
マカオで撮影された本作は集団セッションとしての映画作りの核をトーが掴んだかにみえる「ザ・ミッション/非情の掟」と配役(アンソニー・ウォン他)がほぼ同じで、ゆるい続編意識が漂うが、トー・アクションの決定打といっていい。ぜひ見てほしい。
(滝本誠)