「強大なイメージの前で。」ノルウェイの森 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
強大なイメージの前で。
幸い?原作や村上春樹氏に興味がなかった私は、
何と比べることもなく本作を観ることができたが、
だからといってうわぁ~♪素晴らしい♪でもなく…
文的表現をそのまま映像に持ってくることの違和感と
読者のイメージに沿うキャスト探しは難局ということ。
それらをふまえて監督も外国人ということで、これは
もう別物として捉えた方がいいのだろうな、と思う。
そうはいってもベストセラーとなれば^^;読んでいない人
の方が少ないだろうし(爆)比べないのもムリだしねぇ。
私はこの話の死生観、よりももっと単純に、自分の
好きな相手と「愛し合えない」辛さや哀しみを痛感した。
つまりこの「直子」という女性が、精神を病んでいくのは
彼女の性格それ故もあろうが、心愛する男性と身体で
愛し合えないという特異な経験を全て自分の中に罪の
様に抱え込んでしまったことが悲劇なんだろうと思った。
最愛の男は自殺してしまうし(これが理由だったら更に)
愛していない親友の男とは簡単にSEXできてしまったし、
一体自分は何者だ、と真面目な女性なら尚一層苦しむ
だろうと思った。心と身体は別。なんてのうのうと言って
のける図太さが、本作の登場人物たちには、ほぼ無い。
…あ、ひとりいたか^^;
男と女の様々な思いの丈が臆面もなく台詞で綴られ、
「普通言わないだろ、そんなこと。」と赤面するような
やや居心地悪い、気持ち悪い、場面も確かに多かった。
でもまぁ、全体のイメージはこの監督ならではの感覚で
さほど違和感はなかった。前作よりはかなり観やすい?
若いうちに様々な経験を。とはいうが、死を間近にして、
哀しみを受け止める年齢に達してない時、どう抱えれば
よいのかが分からず、彷徨ってしまう心の行く先を細部
まで丁寧に描いている。台詞が遠くを彷徨い、どこかに
突き放した感があるのはそのせいなのだろうか。
キャスト陣に色々申し立ては多いようだが^^;
マツケンはよく健闘していたと思う。菊地凛子は私も
あの毒々しい顔が苦手なのだが、演技力はやはりある。
なんで映画化するんだろうと訝しがる原作ファンに、
ほらやっぱり原作のイメージはこうじゃないでしょう?と
(私でいえば実写版ヤマトの感想のように^^;)
自身で確立したイメージはおいそれとは崩れないことを
証明したかのような作品。一応意味はあったのかな、と。
(儚い人生より図太い人生を。愛は理屈で語れないもの)