劇場公開日 2010年12月11日

ノルウェイの森 : 映画評論・批評

2010年12月7日更新

2010年12月11日よりTOHOシネマズスカラ座にてロードショー

セリフの距離感で見せる村上春樹の世界観

難解な内容のうえ、未完のまま観客に投げてしまった感のある「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」が前作だけに、トラン・アン・ユンが「ノルウェイの森」を監督することに一抹の不安を覚えた人は少なくないはず。だが今回はかなりシンプルでわかりやすい作品になっている。

とはいえ原作者は村上春樹である。俳優と役柄のイメージがマッチするかどうかという問題ではない。村上作品独特の世界観を直接的な表現媒体である映像でいかに表すか、その方法論を見出さなければならない。そのキーは、セリフの距離感をいかに計るかという点だと考えていた。村上作品のセリフはどこか相手ではなく、もっと遠くに向かって発せられているようなところがあるからだ。

かくして本作は、脇の俳優陣に60年代の日本映画のような独特のセリフ回しを徹底させるという方法を採った。リズミカルで感情を排したような喋り方は、メロドラマになってしまう危うさを回避させ、トラン・アン・ユンのクラシックなテイストともマッチ。また彼の得意とする肌を通した表現は、登場人物それぞれの若さゆえの存在の危うさと、それに反する生の強さを浮かび上がらせた。とくに緑役の水原希子の頬やうなじから発せられる若さは、それだけで生を肯定している。存在の確かさが発する説得力は、映像ならではのものだろう。彼女がもたらした新鮮さは、この作品最大の収穫といえる。

ラストでビートルズのノルウェイの森が流れると、小説ではピンとこなかったメロディが、妙にしっくりきた。ということはこの冒険、かなり健闘したということか。

(木村満里子)

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