「ロマンティックが止まらないタイタニックファンに平手打ち!」レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
ロマンティックが止まらないタイタニックファンに平手打ち!
ロマンティックが止まらないタイタニックファンに平手打ち!
サム・メンデス監督ってジェームス・キャメロン監督のことが嫌いなのかな?
あの、サム・メンデス監督は、「タイタニック(1997年)」が嫌いなのかな?
このキャストで、こんなトータル「唾飛ばし合いの夫婦喧嘩」話を撮るなんて(キャシー・ベイツも出てますしね)。どうしても、タイタニックの"その後感"が否めないと思うのですが。
あの時ジャックは死んで、ローズとは結ばれなくて良かったんだ。
結ばれてたら、きっとこんな感じで結婚生活は破綻していたさ!
ロマンティックが止まらない二人を想像して、劇場に訪れたタイタニックファンに、思いっきり平手打ちして目を覚まさせる本作。そんな悪意をほんの少々感じると共に、ディカプリオと当時の妻ウィンスレットが、「タイタニック」後、あのイメージをずっと引き摺ってることを哀れんでるようにも思えます。
こんな見方は、捻くれてるでしょうか?すみません。
しかし、結婚、子供、家族に対して、自分の夢以上の価値を見出せないというのは、やはり悲しいことですね。
でも見出せず、ただフランクの言う「絶望的な虚しさ」を抱えて生きている人もいるんでしょう。けれどこの二人は、ただそれを抱えるだけでは我慢ならない。
妻エイプリル。
50年代のアメリカはまだ保守的で、女性が避妊することは許されておらず、また堕胎なんかできない時代でした。エイプリルは、妊娠が自分の人生を狂わせたとずっと思っています。
また家事を一生懸命にやっても、誰も認めてはくれない。
夫フランク!認めないどころか、女遊びが激しい。
平凡な人生を嘆くフランクは、浮気で自分の男としての魅力を再確認したいわけです。俺は平凡な男じゃない!まだまだイケてる!
でも浮気して帰宅すると、妻と子供達がバースデー・ケーキを作って待っていてくれる。この時のディカプリオの表情が秀逸です。
家庭を持って平凡な人生を送る。例え絶望的な虚しさを抱えても、こうやって家庭で満たされたりする。
だからフランクは、パリに行きたいけど、正直怖いとも思っている。退屈で平凡な自分を、認めてるから。
でもエイプリルは、自分では認められない。そんな鬱憤は、夫に向けられます。
「愛してない」
「寧ろ憎い!」
自分の人生を滅茶苦茶にしたのは夫。夫=加害者、妻=被害者な図式から抜け出せません。
この二人の間に入って辛辣な言葉を吐き続けるのが、心を病んでいるジョン(マイケル・シャノン)。マイケル・シャノンって本当に、尋常じゃない目つきと、存在感ですよね。
「あんた(エイプリル)がそんなだから、夫はあんたを妊娠させることでしか、男を証明することができないんだ!パリに行くのが怖くてしょうがないんだ。だからあんたをわざと妊娠させたんだよ。最後に一言、あんたのお腹の子供でなくて良かった!」
なんというパンチ力。マイケル・シャノンって凄いです。
サム・メンデス監督といえば「アメリカン・ビューティ」でも、アメリカ中流家庭の崩壊を、社会問題にブラックな笑いを交えて見せてくれましたが、本作はストーリーは単調で、ディカプリオとウィンスレットのガチンコ演技対決による家庭の崩壊を描きます。
ポスターが、タイタニックでお客さんを呼ぶ気満々なんです(笑)
「誰も逃れられない、運命の愛」とか、そういう映画ではありませんからね!
けど、このキャッチコピーで若い人が観に行ったら、凄く勉強になったとも思うんです。もし二人が結婚したら、将来はきっと出産問題って浮上するわけですから。
そう!私が言いたいのは、そこなんです!
本作は50年代のアメリカの話ですよね!?
でもね、日本では今でもこうなんですよ。
出産でキャリアを諦めるのは、圧倒的に女性の方なんです
そんなことを考えて観ると、また違った感情が湧いてきます。