劇場公開日 2009年1月24日

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レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで : 映画評論・批評

2009年1月13日更新

2009年1月24日より丸の内ピカデリー1ほかにてロードショー

見せかけの繁栄と幸福の足元を見つめ直すホームドラマの秀作

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沈みゆく豪華客船で出会い、刹那の恋に燃え上がったカップルが再競演を果たした本作では、反ラブロマンスとでも呼ぶべき愛の修羅場が展開し、結ばれたことに苦悩する2人は、海よりも深い奈落の底へと堕ちていく。

舞台は、アメリカが経済的な繁栄を謳歌していた1950年代半ば。郊外に居を構え、幼な子とともに希望に満ちた生活を始めたはずの若夫婦は気づいてしまった。システムの歯車に組み込まれ、最新のモノに囲まれて暮らすことの虚しさを。都会での死ぬほど退屈な仕事に夫は嫌気がさし、瀟洒な家に閉じこめられた妻は内的に壊れていく。何者かになる夢を抱いていた2人は、このサバービアと同じく、自分たちの中身も虚ろであったことを悟り始める。夫は絶望的な空虚さの中に身を埋めかけるが、妻はアイデンティティを取り戻そうと必死にもがくのだ。どんなに熱演しても仇になりがちなディカプリオの少年性が、成長しきれない夫の姿にプラスに働き、喪失感が狂気へと変わる妻を体現するウィンスレットが凄まじい。

「何不自由ない暮らし」の中で増幅する「満たされない心」。今に至る、社会と家庭の崩壊の芽は、最も輝いていた時代にすでにあった事実を直視させ、見せかけの繁栄と幸福の足元を見つめ直すホームドラマの秀作である。サム・メンデスは、ブラックな笑いに転化させた「アメリカン・ビューティー」よりも遙かに辛辣に、過剰に煽られた夢や理想を捨てきれずに破滅していく、アメリカ的な幸福の正体を暴き出した。

清水節

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