ハート・ロッカーのレビュー・感想・評価
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痛みの中毒性
冒頭「戦場は一種の麻薬のようなもの」
言いたい事はそれが全て。
戦争って、つくづくプラスになるものはないですね。
とにかく、じっと耐えつつ、張りつめた生々しい緊張感。
心も神経もピリピリとキリキリと実に疲れました(笑)
主人公だからきっと死なないだろうとは思いつつ、
周りにいる住民が見つめる中、いつ起爆スイッチを
押されてもおかしくない状況で
ゴロゴロする爆弾を目の前に、手際良くパチパチとコードを
切っていく様、動きづらい防護服を思い切り脱ぎ捨てたり、
とにかく度胸が良すぎる行動にハラハラしっぱなしでした。
監督軍曹じゃなくても「返事はちゃんとせんかい!」と
やんちゃな兵士を殴りたくなる気持ちに同化してました(笑)
にしても、他の作品と何かちがう一線を画するリアル。
映像的にカッコつけたり美化したりする作品は多い中、
戦争自体も登場人物も否定も肯定もしない
絶妙なバランスの乾いた描写。
こういうとこ、女性監督ならではだなぁと感じました。
あと「勇者たちの戦場」という作品にあった
帰還兵が戦場でのトラウマから平和な母国での生活や
家族ともなじめず、また自分の居場所を求めるように
戦場に戻って行く兵士がいましたが、
そんな心情がこの作品のラストにも感じられました。
生きて帰りたかった母国も帰ってみると平和が虚しくて
また戦場にでかけてしまう中毒性。やっぱ不毛です。
そして男は戦場に向かう…
この世に「爆弾」は不要!
歯がガタガタと鳴るほどの臨場感
言葉が通じず文化も違う異国。同じ前線でも、見えない敵との間に仕掛けられた爆薬が相手の日々は毎日が死と隣り合わせだ。その緊張感とストレスがひしひしと伝わってくる。怖いとは思わなかったが、アドレナリンが分泌されるのだろうか、歯がガタガタと鳴る。数秒先も分からない極限状態に身を置く彼らにとって、血を分けた肉親の存在は、自分が生きてきた証でもある。
恐れ知らずに見えるジェームズは、虚勢を張るただの命知らずなのか? いくつかのエピソードを積み上げながら解き明かされていく。
日常の買い物もろくにできない男だが、爆発物を処理する快感から逃れられない中毒を持ち、なによりも、一人の犠牲者も出したくないという強い信念が根底にある。そんな漢たちが乗るクルマに、現地の子供達は石を投げつける。
とても女性が作った映画とは思えない。骨太で臨場感があり、ビスタという小さいサイズながら、すっかりはまり込んでしまう。
爆薬処理もサスペンスフルだが、砂漠で敵と遭遇するエピソードは、さらにジェームズの新しい一面を見せつつ、作品に於けるひとつのアクセントにもなり、その演出が素晴らしい。
だが、万人向けの映画ではない。
漢 漢 漢!
3月8日、新宿武蔵野館で観賞。
先立ってアカデミー賞を受賞したから来たわけではなく
週末仕事で観れなかったのです。
この映画…イカス!最高に
骨太な漢達の描写に筋肉痛でもジムで筋トレしたくなるほどです
「顔ややめときなボディーにしときな」って三原じゅんこばりで行われる
腹パンチごっこ、これ中学生のころやってたな…
そのほか男なら思わずニンマリなシーン満載!
DVDで家でしっぽり観る映画ではないし、どうせなら音響の良い映画館で観る事を強くおススメしたい(とはいえ俺は武蔵野館…)。
最後にビグローの受賞コメントがアメリカ軍によって死亡したイラク市民等への気遣いに欠けるようなことを言ってる連中がいますが、
それを言う奴は偽善な平和主義者で実際は電車で年寄りに席も譲れないような輩なんじゃないかと言いたい
イラク戦争の真実。
第82回アカデミー賞9部門(作品賞、監督賞(キャスリン・ビグロー)、主演男優賞(ジェレミー・レナー)、脚本賞(マーク・ボール)、撮影賞、編集賞、作曲賞、音響編集賞、録音賞)ノミネート。
監督が、この作品とアカデミー賞作品賞を争っている「アバター」のジェームズ・キャメロン監督の元妻で有ると言うこともさておきながら、プロデューサーがアカデミー会員に対して「ハート・ロッカー」への投票を呼び掛けるメールを送ってアカデミー賞授賞式への立ち入りを禁止された他、「自分がモデルで有る」と主張するアメリカ陸軍曹長から訴えられたりと、本来のところ以外でも話題を振りまいています。ちなみにアバターの制作費は3億ドルと言われていますが、こちらのハート・ロッカーの制作費は1500万ドルと言われています。20倍ほども制作費に差が有る作品同士がアカデミー賞を争っていると言うのは、中々興味深いです。
映画本来のところでの騒ぎは別にして、本家のアカデミー賞の前に英国アカデミー賞を授賞していますし、それ以外にも全米映画批評家協会賞、ニューヨーク映画批評家協会賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞、サンフランシスコ映画批評家協会賞、ワシントンD.C.映画批評家協会賞、シカゴ映画批評家協会賞、ボストン映画批評家協会賞、放送映画批評家協会賞・・・と、沢山の賞を授賞しています。実力は、十分と言うところでしょうか。
さて、映画の中身ですが、“リアル”と言う言葉が相応しいですね。作品にあまりイメージを抱かせないように、それほど有名ではない俳優を起用したと言うことですが、それが当たっていて、まるでドキュメンタリーであるかの様な作品に仕上がっています。もっとも、主演のジェレミー・レナーはこの作品では、命知らずのアウトローな役どころな訳ですが、彼は実は「S.W.A.T.」にも出ていて、こちらでもアウトローな人物の演技をしています。って言うか、「S.W.A.T.」では、本当のアウトローの役ですが(苦笑)。また、舞台は2004年のバグダットですが、撮影は当然バグダッドでは行えないので、となりのヨルダンで行われています。
この映画にまつわる逸話がもうひとつあるんですよね。この映画、実は2008年には完成していたんですが、中々配給が決まらず、アメリカでブッシュ政権からオバマ政権に政権が交代した途端に、配給が決まったと言う話もあります。政権交代と、この映画の配給の関係があるかどうかは判りませんが・・・。アメリカの保守派は、この映画を一般市民に見られて、ベトナム戦争の二の前になる事を恐れていたんでしょうか?
最後に。タイトルの「ハート・ロッカー / Hurt Locker」ですが、「行きたくない場所」と言う意味が有るそうです。
まあまあ
主人公の心が戦争によりブチ壊れていく心理ドラマでした。
タイトルの意味するところは、主人公の心が戦争によりブチ壊れていく過程が描かれているから来ていました。どうブチ壊れていくのか。それは恐らく皆さんが戦争映画に思うイメージの逆をついたものだったのです。
冒頭監督は、まるで観客に挑戦するかのように、一行のテロップを何気なく示します。 『戦争は、麻薬である。』と。激しい戦闘にのめり込ば込むほど、その刺激にのめり込むようになるのだと宣言して、物語は始まります。その一言に、そんなはずだろうと直感しました。だけどエンディングになんと主人公トンプソン軍曹は、円満な家庭生活に自分の居場所はないと悟り、自ら志願してまたまたイラクでの爆弾処理に赴いていくのです。
その間にあった、わずか38日間のイラクでの爆弾処理の体験。そこで描かれる極限状況と日常生活を心理描写まで限りなくドキュメンタリーに近い現実そのままのタッチで描かれることで、監督の冒頭のメッセージに、思わずう~んと唸るしかありませんでした。 ラストまでに見事に納得させられたのです。
舞台はフセイン政権崩壊後の混乱まっただ中の04年、首都バグダッド周辺で活動す
る彼らが、任務明けを迎えるまでの出来事を追っていきます。
ジャーナリストのマーク・ポールがイラクで米軍を取材した体験をもとに脚本を執筆しており、限りなくノンフィクションに近い現実味がこもっていました。爆発物処理班の兵士たちは、現場で爆弾だけを相手にするのではありません。解体ロボットを操作し、宇宙服のような防護服に身を包んで慎重に作業を進める彼らは、見張り役を立てて周囲に鋭い目を光らせる必要があります。近くに隠れ潜む敵が、いつどこから攻撃を仕かけてくるかわからないからです。そんな戦場での爆弾処理を巡る状況が、徹底的にリアルに描かれていました。
本作に近い作品として、下記の二つの作品があります。
ブライアン・デ・パルマ監督『リダクテッド 真実の価値』は、イラク戦争の中で、ある検問所の兵士が記録した映像を再現したもの。検問所の米兵が、14歳の少女をレイプし、その家族を惨殺、その後少女の顔面に銃弾を撃ち込んで火を放ったという事件のあらましを描くもの。
本年5月公開のマット・デイモン主演の『グリーン・ゾーン』は、イラク戦争の口実に使われた大量破壊兵器の所在を巡り、国防総省の自作自演であったことを告発するものです。
この二つの作品は、反戦映画として、かなり露骨なメッセージを主張します。ところが本作は、一切政治的主張を出しません。爆弾処理に明け暮れる主人公の日常を淡々描いているのに、描いている出来事が戦争の狂気を強烈に印象づけられてしまう。そんなビグロー監督の演出の巧みさに魅了されました。
このこと以外にも、本作でのビグロー監督の驚くべき演出力の高さは枚挙に暇がないほどです。イラクの隣国ヨルダンでロケを実施し、「ユナイテッド93」のバリー・アクロイドを撮影監督に起用。手持ちカメラによる臨場感に満ちた映像で、まさしく『一触即発』の戦場の危うさを観る者に体感させていきます。常にカメラの先には、舞台を見つめる現地人の姿を映し出し、このなかにゲリラが潜んでいるぞと言わんばかり。事実油断してみていると、次のシーンでいきなり狙撃を受けたり、突如爆発が起きたり、何かが起きる!と予感させる緊迫感溢れる展開に、画面に釘付けとなったのです。
冒頭のシーンで、爆発が起きるときの静けさ。そしてわざとスローモーションで描かれる爆発シーンが、こんなにも強烈な印象をもたらすのかと思い知らされました。始まってすぐのシーンから、演出のレベルの高さに脱帽さらせれしました。
爆弾処理という人命救助のミッションに身を投じた兵たち。その死亡率は5倍も高く、死線ギリギリの日常のなかで、兵士たちの恐怖や不安をえぐり出す濃密な心理描写にも引き込まれることでしょう。
ところでアカデミー賞では、「アバター」が各賞を独占しそうな勢いです。ビグロー監督は「アバター」のジェームズ・キヤメロン監督の元妻です。対照的な作風の2作品で元夫婦がオスカーを競い合う構図もおもしろいです。SF大作に、全員無名の役者と究極のリアリズムをもって対抗するしている本作こそ、ぜひ作品賞をとってもらいたいものだと願います。
観る者を引き込む
3Dのアバターと並んで何かと話題の映画、ハートロッカー。
「ハート」はHeart(心、心臓)じゃ無くてHurt(怪我、傷)。
アカデミー賞、私はハート・ロッカーの方を選ぶ。
社会的な問題を取り上げているから深く考えさせられる内容なのだが、鑑賞中は力が入りすぎて何度も身を乗り出してしまった。
イラクにおける爆弾処理班の日常とはこれほどまでに狂気と隣り合わせなのか。命を守りながら活動する事は第一の条件だろうに。
主人公は殆ど取り付かれていると言っても良い、次々と危険な現場に積極的に身を投じて行く。
このような現場では、ミッションを終えてから休暇に入り帰国したいと切望して活動するだろうに。
しかし、戦争と狂気の中にあっては、それに魅入られてしまう心理も存在するんだろうと妙に納得してしまう。
終了後、日本はこの映画の世界とはなんてかけ離れているんだろう、と呆然としてしまった。平和で安穏としていて、オリンピックのメダルでハラハラしている人々のなんとのん気な事か。
失業中の自分の悩みなんては大した事ないのかもしれないな。
淡々と生きる
こんにちは(いま2月24日11:55頃です)
eiga.comの試写に応募して当たったんです。
それで、会場に6時30分に着いたら、長蛇の列。
中野ゼロホールは1500人くらい入る試写会をやるには、大きな会場。
だから、大丈夫だろうと思ったけど、その後も続々と並ぶ。
アカデミー賞最有力というふれこみが効いているのだろう。
と、前置きはこのくらいに。
レビューですが、なんといったらいいのか。
少なくても、この映画に倫理を求めてはいけない。
倫理観よりは、生物欲求というのだろうか。
人間のというより、生物の原初的な欲求。
与えられた環境のなかで、淡々と仕事をする男たち。
いつも極限だから、考えるのをよそうとする爆発物処理班。
それでも吹き出るように出てしまうアドレナリン。
なんか、それも顔のアップや上半身が映し出されるから、
彼らの息遣いが伝わってきてとてもリアルなのだ。
唯一、映画らしいというか、ストーリーらしいのが、
街で知り合ったアラブの少年”ベッカム”との交流。
でも、それは本当の話ではなく、錯覚だったのだが・・・。
かくも現実と夢想の境もなくなっていることを教える。
それでもひとは生きるのだ。
そして、普通の生活に戻るのだが、普通が普通ではなくなってしまった。
極限の生活が忘れられなくなってしまい・・・
どこか、壊れてしまった人間としての精神、知性。
戦争に生きるということは、こういうことなのかもしれない。
僕もあなたも、こうなってしまう可能性は十分にある。
そんなことを突きつけた映画といえるだろう。
女性監督が撮った“骨太戦争映画”
“本年度アカデミー賞最有力、最多9部門ノミネート!”現代の戦場を駆け回る“爆発物処理班”の姿を、女性監督キャスリン・ビグローが、リアルに描き出しています。
これまで、映画の題材としてあまり取り上げられたことがないと思われる“爆発物処理班”。そう、過去に娯楽戦争映画で脚光を浴びたと言えば「トップガン」や、「ネイビー・シールズ」などの、“チョット華やかでカッコイイ”っていうセクションが多かったと思います。然るに本作の主役“爆発物処理班”は、非常に地味です。決して華やかではございません。しかし、“自爆テロ”などが横行する現代の戦場で、彼等のスキルは欠かすことの出来ない重要なものになっています。爆発物処理班の兵士の死亡率は、他の部署の兵士よりも遥かに高いのですが、『爆発物処理班が存在しなければ、戦えない』と言うのが、現実なのです。そんな過酷な部隊の実情を、この映画はリアリズムを追求して撮り上げています。ですから、映像はもう殆んど『これ、ドキュメント?』って言っても過言ではない仕上がりで、現代の戦場の裏側を重く、且つ淡々と映し出しています。
こんな“男臭い映画”を監督したのは、キャスリン・ビグロー。そう、前述したように“女性監督”なんですよね。しかし、本作が女の人の撮った映画とは恐らく見終わった人は、俄かに信じ難いんじゃあないでしょうか?吾輩も正直、驚きました。『こんなの、どうやって女性に撮れるの?』って。決して差別的に思ってるのではなく、この映画は“男が撮る以上に骨太な戦争映画”に仕上がっていると思うからです。確かにキャスリン・ビグローの過去の作品(例えば「K-19」とか「ハートブルー」etc)も、相当に骨太であったと思いますが、本作の骨太さは、それらを遥かに凌駕しております。ホント、この監督は肝が据わってますね。もう『行くとこまで行ったれ!』って感じで。
主役の3名は、ほぼ無名(但しジェレミー・レナーは、今回の演技で、オスカーの主演男優賞にノミネートされました)ですが、僅かな出演シーンにも拘らず、監督とのコラボレーションに魅了されたハリウッド・スター達(ガイ・ピアース、レイフ・ファインズ、デヴィッド・モースといった面々)が、脇をガッチリ固めているのも見所の一つです。人徳あるんですね、キャスリン・ビグロー!
で、巷で話題になっております“元旦那”ジェームズ・キャメロンとの“痴話げんか”…もとい“アカデミー賞・頂上決戦(^^;”についてですが、あちらの映画=「アバター」は、“現実には決してあり得ない世界を、まるで現実であるかのように、スクリーン上(一部飛び出す)に再現した映画”だと思います。片や本作「ハート・ロッカー」は“一般人は殆んど知らない現実を、よりリアルな現実として、一般大衆の目にスクリーンを通して触れさせた映画”だと思います。確かにスケールや映像では、前者に軍配が上がると思いますが、現実を描いているという点で、ストーリーの重厚さや演出手腕としては、後者が有利だと思います。何より、この映画は生身の人間が演技をしておりますので、“作品の質”と言う点でも優れていると思います。勝手に主観を並べましたが、果たして結果はどうなりますことやら(これで、全然違う作品が受賞したら笑うな~)…?
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