「いい部分もあるが、詰め込みすぎで理解も浅い」オーストラリア Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
いい部分もあるが、詰め込みすぎで理解も浅い
総合:70点
ストーリー: 55
キャスト: 75
演出: 70
ビジュアル: 80
音楽: 70
アメリカ西部をオーストラリア北部へ、黒人をアボリジニへと移した西部劇のよう。魅力的なヒロインと開拓の厳しさを描き、オーストラリア版の「風と共に去りぬ」といったところを狙ったのだろうか。それに差別やら歴史やらを詰め込んだ、野心的な作品になっている。
最も面白いのは前半の農場経営の困難であった。この時代らしい、競合相手からのあらゆる不正行為と妨害行為を受けて追い込まれながら、命懸けの起死回生策を実行する。雄大な自然を背景にしたダーウィンへの牛の厳しい移送が見所。
しかしどうも視点がオーストラリアの多数派の白人からの立場で作られているように感じる。白豪主義だった彼らなりの反省もあるのだろうが、それを深く掘り下げることを主題にした話ではないし、アボリジニからの視点はあまりない。それを感じさせることの一つが、アボリジニを超自然な力を持っている何か特別なものであるかのように描いていること。砂漠の横断の前に忽然と現れ道案内をしたりとか、同じ人類として見るというよりも何か神秘的な特殊な生物として存在しているかのようで、西洋人が理解できないものに対してとってつけたような古い解釈をしている。暴走する牛を崖への転落を防ぐ場面も同様で、こんな形でしか彼らを描くことが出来ないことを見ると、同じ人として生活をしている彼らを本当に理解しようとしているようには見えない。
結局詰め込みすぎなんじゃないか。しかも反省しているようで、本当は理解出来ていない。ひょっとすると言い訳して正当化しているだけなのか。苦境に立つ農場を、キッドマンが如何にして再生させていくのかに絞って制作したほうが楽しめたように思える。ただしアボリジニの超常現象なしで。
気に入らない部分もあったが、それでも映像と前半の農場経営の話が良かったので、そこそこに楽しめたとしておこう。キッドマンに加えて、子供のナラを演じた少年も魅力があった。