「迫力も厳しさも足りない」ブタがいた教室 horitateさんの映画レビュー(感想・評価)
迫力も厳しさも足りない
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原作『豚のPちゃんと32人の小学生』とそのビデオよりも劣る作品。主演の妻夫木聡には、少なくとも実践した黒田先生ほどの迫力すら感じられなかった。せっかくの3年生の申し出を無にする姿勢も許せないと感じた。1つ評価できることは、1人の子どもの父親が、子どもの頃、豚を捌く大人に違和感を感じたが、むだなくいただくことが命を大切にすることだ、と諭す場面だった。そこをもっと前面に出せば、原作自体の限界さえも越えたかもしれない。原作のビデオも、NHKのプロデューサーから、「結論もわからずに始めてしまって、挙句の果てに子どもたちにこんな辛い思いをさせる教師は、教育者ではない」と言われ、放映を断られている。原作者が範とした鳥山敏子氏(『いのちに触れる』太郎次郎社、1985年刊)は、豚にしても鶏にしても、泣いている子どもの前に頑として死骸をつきつけ、むだなくいただき、命をいただくことの厳しさを学ばせたものであった。そうした厳しさを描こうとした対極的なドラマとして、期せずして大杉漣がどちらにも出演していた『牛に願いを』(2007年7-9月放映)があったのではないか。大学生と小学生という年代の差はあれ、育てた動物への愛着を断ち切らなければ生計が成り立たないという厳しさを教えるというテーマは、どの年代にとっても重大なものであるだろう。また、それはドラマであったが、実話としてNNNドキュメントで2003年6月25日に放映された『いのち だきしめて 牛飼いナオキと育子さん』も同じように、畜産農家の厳しさを小学生に伝えるものであり、必ずしも学校で飼育することよりも適した形態があることを教えてくれるものと言えよう。
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