色即ぜねれいしょん : 映画評論・批評
2009年8月11日更新
2009年8月15日よりシネセゾン渋谷、新宿バルト9ほかにてロードショー
セックス夢想・妄想の青春グラフィティ
みうらじゅん(原作者)と田口トモロヲ(監督)が本作のPRの中で童貞やセックスをキーワードに語りつくしているように「ヤリたい盛り」の男のコを主人公にした青春グラフィティである。
ともすれば、「ポーキーズ」や「アメリカン・パイ」と大差ない内容であり、新味を追っておらず古典的な作劇術に頼っている。だが、下品さが感じられないのは、奇しくも「アメリカン・グラフィティ」が公開された74年に、物語の作者が京都の仏教系男子校の文系“童貞”高校生だったからだろうか。
まさしくセックスとロックに、青春のエネルギーを発散させるのだが、そのロックもエレキ時代のボブ・ディランではなく、フォーク時代のディランなのがどこか健全なムードが漂っていて面白い。それにセックスといってもストレートに描写されず、妄想や思考で止まっていて、かえっておかしいのだ。
主人公を徹底的に愛せてしまうのもいい。新人・渡辺大知(黒猫チェルシー)の屈託のない笑顔が、映画にバツグンの化学調味料を加えているかのようだ。おかんの堀ちえみ、おとんのリリー・フランキー、“フリーセックスの島”のユースホステル従業員で、いい歌を教えてくれるにいちゃんの峯田和伸(銀杏BOYZ)、作詞・作曲を初めて褒めてくれる家庭教師のにいちゃんの岸田繁(くるり)。みんながいい表情をしている。
(サトウムツオ)