「やはりハードルが高い手塚治虫作品の映像化」MW ムウ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
やはりハードルが高い手塚治虫作品の映像化
政府によって闇に葬られた島民虐殺事件。二人の少年が生き残る。エリート銀行員となった結城は復讐を誓い、犯行を繰り返す。神父となった賀来は結城を救済しようと苦悩する。そんな時、かつての事件の鍵を握る“MW”を手に入れた結城は世界を滅ぼそうとする…。
女装、男婦、同性愛などを描き、手塚治虫の作品の中でも“禁断”と言われる問題作の映画化。
確かにこの映画の出来は“問題”だ。
設定やストーリーが若干違うのは致し方ない。現代的なアレンジというやつだ。
しかし、女装や男婦や同性愛といったアブノーマルな要素が丸々省かれているのは頂けない。この作品が異色と言われる最大の要点であるハズ。
これにより、美しき犯罪者・結城の魅力が半減したと共に、作品の面白味もガタ落ち。
そこは激しいアクションでカバーしようとしているが、緊迫感が盛り上がらない。
冒頭、タイでのアクションも、演出も迫力も今一つ。
石橋凌は汗びっしょりかいてお疲れ様だが。
復讐という暴挙を行う結城を反面教師として正義や善を訴えようとしているのだろうけど、それがなかなか伝わり難い。MWの影響で人間ではなくなってしまった哀しみも感じられず、単なるテロリストにしか見えない。
賀来の苦悩、二人の関係性も踏み込みが足りない。
登場人物の深みの要素を省いてしまったのが仇と言えよう。
玉木宏にはこの役は力量不足。
山田孝之も本来の実力を発揮出来ず。
「どろろ」「ATOM」「ブッダ」など、手塚治虫作品の映像化はどれも決定打に欠ける。
それほど原作のクオリティが高いという事でもあるだろう。
本作もまた例外に漏れなかった。
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