「一人のスタントマンと、一人の少女が出会う、ちょっとした奇跡もしくは。」落下の王国 ターコイズさんの映画レビュー(感想・評価)
一人のスタントマンと、一人の少女が出会う、ちょっとした奇跡もしくは。
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入院中の少女、アレクサンドリアと半身不随の宣告で自暴自棄になっているスタントマンのロイの物語。というか、リアルの二人の関わりとともに、ロイがアレクサンドリアに語る壮大な叙事詩も描かれていく。アレクサンドリアはロイにお話の続きを求めていて、ロイはその気持ちを利用するのがなかなかえぐい。ロイは病んでいるしそれを責めても仕方ないのだけど、アレクサンドリアが無防備であればあるほど、観る側としては胸が傷む。なんてことしてくれるんだと。
とはいえ、作品が描く世界は素晴らしいの一言。作中作と現実が絡み合い、ロイの抱える苦しみや葛藤、アレクサンドリアの純粋さ、健気が伝わってくるし、感情の揺れ動きがロイの作る叙事詩の結末を動かしてゆく。その展開に引き込まれてしまう。
アレクサンドリアが観た、あれはロイなのだろうか。ニューシネマパラダイスを思い起こすあのシーン。アレクサンドリアにとってはあれは全てロイで、オレンジに入れ歯を突っ込んで埋めると歯の生えたオレンジが育つ事を夢見る子どもらしい、信じる気持ちの現れなのかもしれない。でも、現実はどうかということはこの作品にとって重要ではないのだろう。ロイとアレクサンドリアはきっと笑顔で別れたはずだ。ありがとうと、別れ際に彼はきっと伝えたことだろう。彼が癒やされたことを救われたことをアレクサンドリアはまるで気づいてないしずっと気づくことはないだろう。そういうことってあるよね?
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