画家と庭師とカンパーニュのレビュー・感想・評価
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【都会からカンパーニュの屋敷で田舎暮らしを始めた中年の画家と彼の家にやって来た小学生時代の悪戯友達の庭師との友情を描いた物語。人生の豊かさとは何かを考えさせられる詩情溢れる作品である。】
■離婚を求められる妻との生活に疲れ、画家(ダニエル・オートゥイユ)は生まれ故郷・カンパーニュの屋敷で田舎暮らしを始める。そこに庭師としてやって来たのは、小学校の時の悪戯を一緒にやった男(ジャン=ピエール・ダルッサン)だった。
お互いにキャンパス、ジャルダン(庭)と呼び合い、二人の生活は始まる。
◆感想
・画家は豊かではあるが、妻との仲は冷えており、美しい愛人もいるが、どこか浮かない顔をしている。
・一方、庭師の男は貧しいが、妻とは一緒に旅行に行ったり充実した生活を送っている事が、劇中それとなく語られる。
■だが、画家と庭師は幼い時の結びつきからだろうか、言いたいことを言い合う程、仲が良い。
それを見守るように、南仏の美しい風景が展開されるのである。
・庭師に癒されるように、画家は徐々に穏やかな表情になって行く。
・だが、ある日、庭師は腹痛を訴え、画家は慌てて知り合いの医師に連れて行くが、死は近いと言われてしまう。
・庭師は、死を悟って居るかのように、退院後は画家と共に釣りに出て大きな鯉を釣り上げリリースをする。
・更に庭師は、且つて勤めていた鉄道の脇にある自身の庭で、自慢の野菜を育てている。
■庭師は亡くなるが、画家は彼を思い出す様に、庭師が愛した彼が作った野菜や、彼が使っていた道具を描くのである。
そして、彼の画は多くの人を魅了するのである。
<今作は、観ていると穏やかで優しい気持ちになる作品である。派手さは一切ないが、この作品には”本当に豊かなる人生とは何か。”と言うテーマが見事に表現されている。
佳き作品であると思う。>
エスプリ‥
がっつりネタばれになってしまうから、これから観るつもりの人は読まないほうが良いでしょう。
基本的に病気展開のお話はキライです。だって先がみえてるし。
可愛そうでしょ?悲しいでしょ?そんなお涙頂戴には気分が冷めてしまう。
のだがしかし。それは一時期ブームになっていたようなアレ系のことであります。この映画はさすがフランスというべきか。悲しいはずだし寂しいはずなんだけれどひねった笑いで魅せてくれる。
映画前半では画家と庭師はまるで共通の言語をもっていないかのよう。
幼馴染なのに長年会わないでいた間に全く別々の世界で過ごして形成されてしまったお互いの形が理解しあえないようにみえます。
現実にもそういうことってありますね。致し方ないけど寂しいことです。
画家は我儘で情緒不安定。庭師はイイ奴なんだけど近くにいたらちょっとうざったいかもしれません。この庭師が良くて。
田舎の祖母や祖父を思い出す。
それこそ教科書に書いてあるような知識はもってないかもしれません。
でもいつ雨がくるか、川で魚を捕まえるにはとか辛いことも長くは続かないとか。生きていくのに本当に重要なことを知ってる気がする。
庭師もそういう人物。
庭師に再会出来た事で、画家はやっと地面に根をはることができるようになった。
アジア食全般が苦手だから日本に関しても一言二言言ってるシーンもありますが、庭師が自分が死んだら天国でなく地に帰って地球の血肉になりたがるくだりは東洋的な感覚に思えて不思議でした。
観終わったあとに心に残るのは可哀想とか悲しいではなく、子どものように大笑いしていた二人の様子。
実際に亡くなった大切なひとを偲ぶとき思い出すのは楽しい時間のことが多いものだと思います。
号泣したけど暖かいいい涙でありました。
会話が好き
同級生の画家と庭師のお話。
2人は仲よかったが、その後の道は全く異なっていて、ある意味対照的。
抽象(芸術)と具体(植物)、別居状態の夫婦とおしどり夫婦。富裕層と労働層。贅沢と質素。
それがお互いの会話の随所に現れる。
人生の曲がり角まで来た2人だからこそ、お互いを尊重して、引き立て、影響しあっているところが、心地よい。
大好きな作品
しばらくのあいだ、私が一番好きだった映画。
言葉少なく、気むずかしく、でも何か根底でつながった画家と庭師の友情。そして、美しい庭の世界観。
静かに流れる映像から、感じ取らせる描写が素晴らしい。
最後の長靴の絵を見たときに、ポロポロ涙が止まらなくなりました。
安っぽい恋愛映画やコメディとは違う、本当に描写とストーリーだけで感じさせるフランスらしい映画です。
より良く生きるとは
人間味溢れる素晴らしい作品。
売れっ子で豪邸に住む画家と鉄道労働者を引退した庭師の出会いと友情を背景に人の生き様とは何か、幸福とは何かを問いかけてくる。
家族を得た幸運をいつの間にか忘れ、育むことを疎ましく思い、若い快楽へと溺れる画家。欲の象徴のようだが、実は多かれ少なかれこれと同じようなことをする人は多いのではないだろうか。
単なる物欲や快楽は虚しい。
愛し育むことに勝る喜びはない。
菜園と野菜たちがその象徴となっている。
なぜいつも「奥さん」と? 自分の妻だろ
映画「画家と庭師とカンパーニュ」(ジャン・ベッケル監督)から。
作品中、主人公のひとり、庭師のジャルダンが、
自分の妻のことを「奥さん」と呼び続けるシーンがある。
字幕を読むたびに「日本語訳」が不自然、と思いつつも、
それが、わざと「奥さん」と読んでいるとは気づかなかった。
(翻訳した人のミスかな?と思い込んでしまったくらい(笑))
しかし、ストーリーの後半で、
画家のカンバスが、庭師に訊ねるシーンがある。
「なぜいつも「奥さん」と? 自分の妻だろ?」
あっ、やっぱり、意識していたんだ、と改めて感じたのはいいが、
「どうしてだろう?」という疑問の答えは最後までわからずじまい。
初老の男たちが演じる「男ならではの距離感」
お互いを支えあいながらも、私生活には干渉し過ぎることなく、
穏やかに、そして静かに友情を深めていく過程は、
私の好きな映画のパターンであるが、やはり腑に落ちない。
なぜ自分の妻を「奥さん」と呼んでいたのだろうか?
私の見落としだろうか、気になって仕方がない。
酒と釣りと家庭菜園。
名画座にて。
私がよく行く名画座では、出演しているD・オートゥイユが
とてもお気に入りのようで、彼の作品がしょっちゅうかかる。
彼はアクションもこなす俳優だが、私はコメディ系に見える。
顔も面白いが、動作も面白く、愛らしい嫌味を連発する^^;
こういう可愛いオジサン(すいません)ってモテるんだろうなー。
なんたってE・ベアールとの間に子供までいるんだもんねぇ♪
今回の彼は「画家」の役で、親友役のいかりや長介似の俳優^^;
J=P・ダルッサンは「庭師」。
故郷に帰った画家の家に仕事を申し込んだ庭師が運命の再会、
そこから友情を育んでいく話である。
話にこれといった起伏がないので、これは観る人によっては
かなり眠くなる作品に違いない気もするが…^^;
でも自分がこんな境地に差し掛かった頃に、懐かしい友人と
また新たな絆を築けるだなんて、やはり羨ましいなと感じる。
穏やかでたわいのない会話が、まだかこれでもかと続いていく…
なぜかダニエルには女ったらしの役が多い^^;
今回も浮気を機に、奥さんから離婚を言い渡されている男の役。
娘にまで罵倒される父親のくせに、どうもこのヒトの顔を見ると、
悪党に見えないから困ってしまう。。^^; 役得か。
ラストのほろ苦い余韻も、家庭菜園で実った野菜たちが、
二人の集大成をほのぼのと語ってくれているようで、温かい。
(嫌味、悪態、何でもござれ。男同士の友情って素敵だ^^;)
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