チェ 28歳の革命 : 映画評論・批評
2009年1月6日更新
2009年1月10日より日劇3ほかにてロードショー
世界中の誰もが知るチェ・ゲバラを虚飾なく描く伝記映画
来日したスティーブン・ソダーバーグ監督がいみじくも語っていた。「実物のほうが演じた俳優(ベニチオ・デル・トロ)よりもハンサムな伝記映画はこれが初めてではないか」と。亡きゲバラはTシャツの図柄になり、世界中で愛されている“アイコン”になっている。
だが、2部作の第1部であるこの映画は、カッコいいヒーローとしての姿はあまりなく、ぜんそく持ちの革命の闘士がマスメディアの注目の的になっていく姿が淡々と描かれる。そこには何の虚飾もない。彼の服装や駆け引きのない態度からは、ガエル・ガルシア・ベルナルがゲバラ青年を演じた「モーターサイクル・ダイアリーズ」の続編的な伝記映画と見ることもできる。
冒頭の白黒画面で展開される1964年12月11日の有名な国連演説でのモラリストとしての彼の北米帝国主義への批判は激烈だ。それから時代は戻ってカラーになり、革命前夜にフィデル・カストロと出会い、キューバ革命に参加していくなかでカストロに次ぐナンバー2(第2軍指揮官)になり、革命を成功させる。
惜しむらくは8人乗りのグランマ号(革命軍82名が乗船)によるキューバ上陸や、首都ハバナの制圧(第2の都市サンタクララ制圧は描かれる)が割愛されていることか。だが、ベニチオ・デル・トロの圧倒的存在感もあり、ゲバラの人生のハイライトがつまびらかになって実に感動的で、続編第2部への期待を大いに抱かせる。
(サトウムツオ)