X-ファイル 真実を求めて : 映画評論・批評
2008年11月4日更新
2008年11月7日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー
TV版のファンなら腑に落ちるに違いない
「ああ、その通り、確かにこうでなくてはならない」と、TV版のファンなら腑に落ちるに違いない。この劇場版第2作は、TV版から劇場版第1作で描かれたエイリアン系の政府陰謀モチーフを排して、それ以外の「X-ファイル」の真髄を凝縮したものになっている。
まず、メイン・モチーフの予言者ネタは、実はこのシリーズの得意技。製作総指揮のクリス・カーターによる傑作選全8作中、2作がこのネタだ。そしてプロットも、予言者が本物かを巡り、肯定的なモルダーと懐疑的なスカリーが対立するという定番通り。そこに幼児虐待や臓器移植といった時事的なモチーフが2つ、3つと絡んでいく。ロケ地も、シリーズの初期ロケ地だったバンクーバーをあえて選択、映像はTV版初期にも増して冷たく、暗い。そして、エンドクレジットの後には、ファンなら感無量のサービスシーンも待っている。
そのうえで、映画版のテーマは、TV版の一歩先へと踏み込む。「信じる」とは、人間にとっていかなる営為なのか。実は、事物の真偽とは無縁なところで発生するものなのではないか。本作はこれを、スカリーを通して描いていくのだ。この点において、この映画はTVシリーズの番外編以上のものになっている。
(平沢薫)