劇場公開日 2009年4月25日

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レイン・フォール 雨の牙 : インタビュー

2009年4月22日更新


日本人であって日本人でなく、街に溶け込む常人に見えて常人ではない、孤高の暗殺者ジョン・レイン。幻想的な<東京>という街を舞台に、大きな罠に取り込まれた男女の逃避行をサスペンスフルに描いた「レイン・フォール/雨の牙」で、主人公の暗殺者ジョン・レインとして、名優ゲイリー・オールドマンに対峙した椎名桔平に聞いた。また、本作がこれまでの日本映画と大きく異なる魅力はどこにあるのかを解説、さらに監督のインタビューもお届けする。(取材・文:村上健一

椎名桔平 インタビュー
「これからの俳優人生の中で、何度も思い出すことになると思います」

椎名演じるプロフェッショナルな暗殺者ジョン・レインが、陰謀に巻き込まれていく…
椎名演じるプロフェッショナルな暗殺者ジョン・レインが、陰謀に巻き込まれていく…

――ジョン・レインという複雑なバックボーンを持つ男を演じるに当たって、苦労した点は?

格闘技も訓練し、役に臨んだ椎名桔平
格闘技も訓練し、役に臨んだ椎名桔平

「“ミステリアス”という言葉をどこかで感じさせるのが、ジョン・レインというキャラクターであり、作品のカラー。彼が取った行動の意味が、その後で分かるという描き方ですから、彼がいったい何を考えているのかをいかに観客に伝えていくのかを意識しました。それに彼は、日系アメリカ人(※原作では日米のハーフで、整形を繰り返している)という設定。異文化で育ったということを、どういう風に感じさせるかも重要なポイントでしたね。この作品は原作者がアメリカ人、監督・脚本がオーストラリア人ですから、彼らが作り上げた世界観に身を置いて、抗うことなくその感覚を受け止めて演技に向かうことが、彼らの目線に近づくことなんじゃないかと考えました」

――完成した映画をご覧になって、その意図は成功していましたか?

「いやぁ……自分のことはホントに分かりませんよ(苦笑)。特に今回はモニター・チェックをしても意味がないほどの撮影量・素材量で、常にデジタルカメラ2台が同時に回っていて、『これ、どっちから撮ってるの!?』という状態。それに加えて、手持ちのカメラが(編集用に)細かいショットをバンバン撮っていくんです。日本でも一部の監督はそういう形式で撮っていくので僕は違和感なく臨めましたが、そういう現場では、役者はもう芝居に向かうことしかないわけです。(作品が出来)上がったときに初めて、『こんな風に撮っていたのか』って。フィルムじゃない時代になって、(素材を)捨てることを前提にした撮り方ができるというのは、強みでしょうね」

――ゲイリー・オールドマンとの共演はいかがでしたか?

憧れの名優とのまさかの共演に椎名も驚いた
憧れの名優とのまさかの共演に椎名も驚いた

「僕は若いころはクセのある役が多く、彼が演じる狂気をはらんだ役、独特の世界観にシンパシーを感じていたんです。憧れていた存在とまさか共演できるとは思っていませんでしたから、楽しみでワクワクして臨みましたね。いよいよ初めてお会いするという日、予期しなかったところで監督とゲイリーが談笑していて『お!』という感じで。自己紹介しなきゃと思っていたら『君のことはよく知っているよ』と。それはそうです、それまで彼は、僕の写真を見ながらの演技が多かったのですから(笑)。そして、その日にいきなり対決シーンでテストもなし。こちらは(ジョンと同じ)『殺してやる!』という気持ち(笑)。そういう役の“気”を出さないと、対峙できませんからね。感情だけは負けちゃいけないんです。ジョンがホルツァーを殴るシーンがあり、監督がゲイリーに気を遣って『やっぱりナシにしようか』と言ったんですが、こっちは『台本にあるんだからやろうよ』って(笑)。かなり近い距離でのアクションで銃を構え直すときに、ゲイリーの顔に当たってしまって、その時は周りの空気がピーンと張り詰めました……思わず『I'm sorry』と言って近づいたら、ゲイリーが『Keep going』と囁いているので、そのまま演技を続けました」

2人の直接対決は、映画のハイライトのひとつ
2人の直接対決は、映画のハイライトのひとつ

――2人が対峙するシーンは、非常に緊迫感がありました。

「10分近くカメラを回したままで演じ続けるんです。それを3回くらい。その度に、彼は微妙に演技を変えてくる。3回目に違う方向性でアプローチしてきたと思ったら、その上にさらに違うものを乗せてくるのが見える。年々僕も自分の中で(演技に対しての)自由な感覚が広がってきてると思うんですが、ゲイリーの自由度はもっと上。まだこのレベルの自由さがあるんだと驚きました。さすがに素晴らしい俳優です。僕のこれからの俳優人生の中で、何度も思い出すことになるだろうと思います」

>>「レイン・フォール」の魅力を分析!(次ページへ)

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