リダクテッド 真実の価値のレビュー・感想・評価
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イラクに限ったことじゃないはずだ・・・
オバマ大統領就任前に観たかった。愚策ばかりのブッシュ政権下の外交術には過剰なまでに憤りを覚えた21世紀。任期を終えてしまったら、米軍によるイラクでの蛮行映像にも冷静に接することができる自分に驚いてしまいます。戦争には正義なんてない。ただ善良な市民が殺されるだけのもの。観終わって数時間経つと、じわりじわりと戦争そのものへの嫌悪感がわいてきました。 ブライアン・デ・パルマ監督が彼らしくない映像で、しかし、デ・パルマらしい主張が感じられる映画。「この映画はフィクションである」とことわっておきながら、イラクのサマラで行われた集団レイプ・殺戮事件の真相に迫ろうとした内容だ。映画人を目指すヒスパニック系の兵士サラサールはビデオダイアリーと称して戦地の映像を撮り続けていて、やがて重大な事件に巻き込まれていく・・・ タイトルの“リダクテッド”とは、残酷なシーンや不都合なシーンを削除した“編集済み”の映像を意味するマスメディア用語。任務地へビデオカメラを持ち込む兵士が多くなり、インターネットの発展によって管理するのも難しくなったのであろう。過去の戦争においても隠したくなる悲惨な事件はあったことまで想像してしまいます。 ドキュメンタリー・タッチの映像は兵士たちの微妙な心理変化も映し出し、人を殺してしまうことに何も感じなくなってしまう様子や、疑心暗鬼となり、テロリストが紛れ込んでいる一般市民全てが人間だと思わなくなる心が伝わってくるのです。特に無邪気な少年たちにも警戒心を抱くところは絶妙でした。 中心となる検問所では英語とアラビア語で停止するよう標識があるのですが、全てのイラク人が読めるわけじゃない。そして、病院へ向かう妊婦が犠牲となり、人を殺してしまうという一線を越えてしまった彼らがでっちあげた理由で民家を襲う。主犯格の二人と、ビデオ撮影のサラサールや見張りに立つ良識あるマッコイなど、知らない俳優ばかりであることも自然な演技でリアリティを増している。 残酷なシーンもあるし、目を背けたくなりますが、インターネット映像も凝った作りになっているため、臨場感を味わうよりも一般ネットユーザーとなって見ている気にもなってくる。しかし、戦争は現実に起こってるんだ!遠く離れた平和な地にいても、現実を受け入れ、戦争をなくすために何か行動を起こさねばならない・・・などと、いつものごとく言うだけ・・・
もやもやが残りにくい
素材の切り貼りで構築された作品なので、こじんまりとはしている。大作感はない、いい意味でも、わるい意味でも。 カジュアリティーズもそうだったが、「表層的な痛み」をとらえて戦場を描いている。単純に悲しく痛々しい、その一面を切り取って。だからなのか、もやもやが残りにくい。複雑であるはずの、戦争という題材なのに。 戦場、年代が違うので比べるのもおかしいが「フルメタルジャケット」は見た後もずっと何かがひっかかっている。 尺も短めだし、あっさりと終わるし、こんなものでしょうか。
ゾッとさせられる"削除"と"逃避"
おぞましく醜い映像の羅列だけど、目を背けては絶対にいけない"醜悪の権化"が刻まれてた…。デ・パルマ監督の名前がなければ、出会うことはなかったかも…。 作品の内容が内容なだけに賛否両論も納得だけど、それでもこの"メッセージフィルム"を知れたことは非常に大きい。それに監督はフィクションであることをかなり上手く利用している(相応しい言い方とは思えないが)。 詳しいことは上手く言えないが、これほど大物監督の名前が意義ある映画は珍しいかも。今の日本人の心境的に直視不可なシーンもあるけど、決して反らしても忘れてもいけない大事なものが宿ってます!ただ本当に見るときは気を付けておいてください。精神的に来る箇所あるので…。
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