劇場公開日 2008年10月25日

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リダクテッド 真実の価値 : 映画評論・批評

2008年10月21日更新

2008年10月25日よりシアターN渋谷ほかにてロードショー

巨匠ブライアン・デ・パルマがその起源に立ち戻る映画

2006年にイラクで起こった米軍兵士による少女レイプ及びその一家惨殺事件を題材にしており、事実に基づくフィクションである……といった冒頭の字幕が本作ではより深い意味を帯びる。イラクで撮影した映像日誌を糧に帰国後は大学の映画学科に入学するつもりの楽天的な兵士による映像を軸に物語が始まるとき、なぜデ・パルマほどの人が“擬似ドキュメンタリー”を今さら踏襲するのだろう……との思いにも駆られたが、映画を見続けるうちに僕のそうした印象は一掃された。

前述の映像日誌に始まり、現地や米国側のニュース映像、基地の監視映像、米国とイラクを結ぶTV電話、反米組織によるインターネット映像……とこの映画は様々なタイプの映像の連鎖によって構成され、いわば誰にも属さない映像の束としてある。むろん映画作家の視線こそが、映像の連鎖を仕掛け、現代社会における映像の増殖やそこに由来する映像の匿名性を喚起させており、本作は巨匠がその起源に立ち戻る映画でもある。たとえば初期作品におけるヒッチコック的なカメラの流用などは、若きデ・パルマの自意識過剰な“引用”といったものではなく、彼が当初から映像の匿名性、誰にも属さない映像=視線を目指す特異な映画作家であったことを物語るだろう。映像を通した映像の批判と映像への批判を通した映像の肯定……。もちろん本作で達成されるスリリングな緊張感や問題提起もまた現代映画だけに可能な芸当なのだ。

(北小路隆志)

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