「ムゴすぎる現実…。」闇の子供たち mori2さんの映画レビュー(感想・評価)
ムゴすぎる現実…。
映画を観終わって、こんなに重い気分になったのは久々ではないでしょうか?『悲しい』とか、『泣ける』とか言う類の言葉では括れない。トンでもない“問題作”です。
観ている間、何度もスクリーンから目を逸らしてしましました。心中で『勘弁してくれ』って、呟いてしまいました。ショッキングな事実と映像。“児童性愛”と“臓器売買”。普通の感覚を持っている人なら『もう充分だ!』と言うくらいに、堪らない気持ちになるでしょう。更に吾輩のように“児童”と呼ばれる年齢の子供を持つ親にとって、この映画はまるで“拷問”のような、『ムゴい』としか言いようがない、2時間18分でした。そして『ムゴい』と感じると同じくらいに、烈しい憤りを覚えました。『何とか、ならんのか!?』と。
しかし、コレが現実なのです。それも、需要の側に一部の日本人も大いに関わっている、作中『東京から地図で20Cmの距離』と台詞で語られる街・バンコクで、実際に起こっている出来事なのです。キレイ事では済まされない、この現実を描いた梁石日(ヤンソギル)の原作を、阪本順治 監督が、真正面からぶつかって入魂の1本に撮りあげています。特に作中、子供たちが無邪気に遊んでいるシーンと、売春宿で鎖に繋がれているシーンの対比が、あまりにも鮮明すぎて吾輩の頭の中から離れません。或る意味トンでもなく、素晴らしい演出です。
江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、佐藤浩市と、豪華なキャスティングが揃って、ラストまで救いのないストーリー(本当にラストで、とどめを刺されます。覚悟してください)が展開されます。正直『出来れば知らないままの方が良かった』とも思えるテーマなのですが、一度は観ていただきたい映画です。但し、決して軽い気持ちで映画館に行かないで下さい。観たことを後悔(“しょうもない映画”とか言う意味ではなく)させてしまうことになるかも知れない映画を、吾輩はおすすめしていますから。
もう一度言います。覚悟を決めて、映画館へ足をお運び下さい。そんなに遠くないアジアの片隅で、凄惨な状況に置かれている子供たちの現状を見るために。