休暇のレビュー・感想・評価
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何を伝えたい映画なのか?
死刑には相場があり、最低2人は殺していて、
しかも情状酌量の余地がない。
しかしこの映画の金田はそういう殺人鬼には見えず、割と正常に見える。
そういう人の死刑を観るのはさすがに心苦しいが、
果たして、金田は実際の死刑囚にどれだけ近いのだろうか。
そして、支え役は本当に忌むべき仕事だろうか?
死に関わる仕事は多数あるが、誇りをもって積極的に行う人も多いが…。
要は、死を見つめる映画としてはなるほど、と思う部分はあるものの、
死刑制度を考える映画という意味では、視点に偏りがあり参考にならなかった。
まるで心は表裏一体の様に
吉村昭による原作は未読。
原作に描かれているのかは解らないが、小さな蟻が3回(うち2回はアップで)出て来る。
初めは死刑囚の前に。
彼はその蟻を見やり、何も行わない。
次は死刑部屋にて掃除中の刑務官の前に。
彼はその蟻を避けて掃除をする。
最後は旅先での部屋で仲居さんの前に。
彼女はお客さんを思いやる為に一匹の蟻をその場で潰す。人の命を奪った者。人の命が絶える瞬間を介添えする者。そして極々一般的な人、それぞれはいつ立場が入れ替わってしまうのかあやふやな状況を思わず考えてしまう。
極めて抑制された演出・演技で観客の心を刺激して来ます。
ただひたすら静かに絵を書きながら“その時”を迎える死刑囚。一時見せる凶暴性にゾッとさせられる。
一方、周りから勧められ見合い結婚を決める刑務官とバッイチ子持ちの女。打ち解けないままに結婚をして、子供と一緒に新婚旅行へ行く。
刑の出向の場面がとてもリアルに充ちているのですが、一見心を開いている様に見えながらも誰ひとりとして信頼していない死刑囚と、新しい父親に心をなかなか開かない子供。共に絵を書く事で自分の世界に閉じこもり刑務官=父親とは交おうとはしない。それが結婚する事を知った時から、妹の幸せを願う死刑囚の心に、新婚旅行中に徐々に…と信頼性を増して来る。
刑の出向中に、痙攣を止め早めに楽にしてあげる役目で抱きしめるのと、夜尿症の子供を抱きしめる描写を対比させて、死刑刑務官の心の胸の内の辛さを表している様にも思えました。
(2008年6月22日スバル座)
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