劇場公開日 2009年5月23日

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「強烈に刺さった」重力ピエロ luna33さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5強烈に刺さった

2024年12月8日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

人によって意見が分かれる典型的な作品かも知れない。突っ込みどころは多々あるが、まあ細かい事はどうでもいい。この世界観が好きか嫌いか、きっとそれだけの話なんだろう。とにかく僕にはめちゃくちゃ刺さったという事だ。

一つ一つの伏線が丁寧なため、どんどん先が読めてしまう。でもこれは伏線が安易という意味ではなく、わざと先読みさせてこれから何が起きるかを観る側にちゃんと予想させているのだろうと思った。これから嫌な事が起きるのがうっすら分かるからこそ何とも言えない「嫌な気持ち」にさせられるのだ。こういった展開のさせ方は実に上手いなあと思う。

何よりキャストが全員素晴らしすぎる。小日向文世さんはいつ観ても本当に素晴らしい。レイプされた妻が身籠ったと知って「産もうよ」と妻に提案する。妻が亡くなった後に「俺達は最強の家族だ」と息子達に語りかける。あんなに柔らかい物腰なのにどこか「陰」があって「芯」があって「凛」としている。その佇まいに心がめっちゃ揺さぶられるのだ。また加瀬亮君も鈴木京香さんも吉高由里子ちゃんも渡部篤郎さんのクソっぷりも(笑)、とにかく皆が素晴らしかった。そして兎にも角にも岡田将生君の美しさですよ!もう「神がかってる」としか言いようがない。おっさんの僕ですら思わず吸い込まれてしまいそうな彼の憂いを帯びた表情…。これはもうやば過ぎるでしょ。

そして映画を観終わった時、何と表現したら良いか分からない気持ちにさせられる。悲しくもあり切なくもあり美しくもある、胸を締め付けられるような家族の愛の物語。原作を読んでいないから何とも言えないが、これが「伊坂ワールド」ってやつなのかと思いながら余韻を噛み締める。すると最後に「あの曲」が流れるわけだ。S.R.Sの「Sometimes」だ。これはもう完全にやられる。染みるなんてもんじゃない!この作品全体に纏い続ける「もの悲しさ」にハマり過ぎてるじゃないか。こんな奇跡あるんだろうか。曲が流れている間、鳥肌が止まらない止まらない。

確かに突っ込みどころは多々ある。でもそんなのどうでもいい。演者、脚本、演出、音楽、それら全てが完全に一体となり同じ方向へ向かって出来上がった「奇跡の作品」。僕はそう思わずにはいられなかった。実はこの余韻がずっと続いており、正直に言うと今でも思い出すだけで胸がぎゅっと苦しくなるのだ。こんな作品にはなかなか出会えるものではない。

luna33
ひなさんのコメント
2024年12月9日

luna33さま
丁寧なコメント返信とフォロー、ありがとうございました。
レビューのレベルが違い過ぎて、もう清々しい気分です。
生涯ベスト5のレビューを1本書き上げたので、自己肯定感の低いコメントは卒業します(笑)

岡田将生さんが女子の共感度が低い役を演じると、「この役は岡田将生なら許せるか!?」とファンの友達が話してるので楽しいです。

伊坂幸太郎さん原作で思い出したのが、堺雅人さん主演の『ゴールデンスランバー』。
好きな映画ではないけれど、冤罪の逃亡犯のフィクションに、“リアリティ”を感じた作品でした。

ひな